鶏冠石(中国湖南省)【表紙】
地学担当 中尾賢一
鶏冠石(けいかんせき)はヒ素と硫黄(いおう)からなる鉱物です。その名のとおリニワトリのとさかを思わせる鮮やかな赤色~オレンジ色で、多くは土状や塊状(かいじよう)ですが、写真のような透明な短柱状の結晶になることもあります。鉱物の硬さを表すモース硬度は1.5~2とたいへん低く、爪で簡単にキズが入るほどです。この鉱物は、オレンジ色の絵の具や花火の材料として使われることがあります。かつては漢方薬として使われたこともあったようです。
鶏冠石はまた、光や湿度に弱く、長時間光に当てると黄色い粉に分解します。このような性質のため、宝石に力ッ卜されることもなく、いろいろな博物館でも美しい結晶はなかなか目にする機会がありません。当館でも、ふだんは綿をかぶせて箱の中に入れ、さらにそれを扉のついた木製キャビネットの奥に入れています。この鶏冠石の展示は、今度の企画展「ミネラルズ」で2回目となりますが、幸いなことに劣化はほとんど無いようです。