植物標本の詳細な画像をインターネットで閲覧できます【情報ボックス】
植物担当 小川誠
アゾラ・クリスタータという名前を聞いたことがありますか?この聞き慣れない名前の植物はオオア力ウキクサによく似た外国産の植物です。最近日本に帰化していることがわかったものなので、ほとんどの図鑑ではまだ取り扱われていません。
ところが、この植物は「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」、通称「外来生物法」という法律で、生態系に強い影響をおよぼすために環境省から特定外来生物として指定されています。特定外来生物に指定されると移動や栽培が法律で禁止されていますので、慎重に取り扱わなければなりませんが、この植物の情報が少ないために気がつかずにうっかり栽培してしまうケースもあります。当館では他に先駆けて詳しい写真をホームページ(http://www.museum.tokushima-ec.ed.jp/ogawa/kika/Azolla/default.htm)で公開したところ、多くのアクセスがあり活用されています。
このようにインターネットには情報の速報性という性質がありますが、大きな情報量を伝達できるという特徴もあります。植物図鑑には植物写真がついていますが、その枚数や大きさは限られています。ところがホームページではそれらを気にすることなく掲載することができますので、図鑑等の印刷物より、詳しい写真を掲載することができ、多くの情報を提供することが可能です。
博物館にはたくさんの植物標本が収蔵されています。その標本をスキャナを使い高解像度でスキャンしたり、デジタル力メラで撮影しホームページに掲載して、誰でもインターネットで見ることができるように作業しているところです。その例はナルトサワギクのアルゼンチン産標本(http://www.museum.tokushima-ec.ed.jp/ogawa/narutosawagiku/arze.htm)で見ることができます。現在、特定外来種や絶滅危惧(きぐ)種、身近な植物など100種を超える標本の画像が蓄積され、近日中に公開される予定です。
たとえば、徳島県の絶滅危惧種オオカラスウリは図鑑にも写真がほとんど掲載されていませんし、インターネット上でもわずかに情報が載っている程度です。この植物は他のカラスウリ属と異なって大きな苞(ほう)を持っていますが、なかかな花を着けた株を見付けることができず区別しにくいので見落とされています。図鑑では葉の表側の毛の状態に違いがあると書かれていますが、写真や図がないので、それだけではどういうものか詳しくわかりません。今回作成した標本の画像では葉の表側の毛の付け根がオオカラスウリは盛り上がっていることで、キ力ラスウリから区別できることがわかります(図)。このように標本の詳細な画像があれば、よく似た種の区別も明らかになります。
図 オオカラスウリ(左)とキカラスウリ(右)の標本の葉の表側。矢印で示した毛の付け根の形状が違っている。 白いパーの長さは 1mm。
博物館ではさらに、全国の科学系博物館を集めたサイエンスミュージアムネット(http://sciencenet.kahaku.go.jp/)を通じ、いろいろな博物館の標本データベースを一度に検索できるようになりました。検索したデータを元に分布図も表示されます。博物館のインターネットを通じたサービスにご期待ください。