博物館におけるX線の利用【情報ボックス】
保存科学担当 魚島純一
みなさんは「博物館でレントゲンを使っている」という話を聞くとどのように感じますか? きっと意外に思われる方も多いでしょう。博物館では、展示や普及行事を行う他にも、さまざまな資料を集めて、それらを保存したり、調査研究したりしています。調査の際には、目(肉眼)で観察する以外に、機械も利用して、できるだけ多くの情報を得られるようにしています。実は、そんな機械の中にはレントゲンを利用したものもあるのです。
木偶のX線透過写真
銅鐸のX線透過写真
まず一つは、物質にレントゲン(X線(エックスせん))を照射すると、含まれる元素がそれぞれ特有の二次X線(量光(けいこう)X線)を放射するという性質を利用した、資料を傷つけることなくその材質を調べることができる蛍光X線分析装置です。遺跡等の発掘調査では、赤い色(顔料(がんりょう))が付着した土器などが見つかることがあります。大昔の赤い顔料には鉄さびや土を主原料にしたベンガラ(酸化第二鉄(さんかだいにてつ))と、水銀朱(すいぎんしゅ)(硫化水銀(りゅうかすいぎん))と呼ばれる辰砂(しんしゃ)という鉱物を原料にしたものがあります。二つの顔料はどちらも赤い粉状で、肉眼では識別できません。ところがそれぞれ原料がまったく遣うので、蛍光X線分析を行うことで簡単に区別できます。
一方、みなさんもよくご存知のレントゲンがもつ物を通り抜ける性質を利用した機械もあります。身近なところでは、健康診断や空港の手荷物検査などでも利用されているX線透過撮影(とうかさつえい)装置です。博物館資料の調査でも、内部の構造や破損状況を知るためなどにX線透過撮影を行うことがあります。写真は、博物館に展示されている資料をX線で撮影したものです。普段見るのとずいぶん雰囲気(ふんいき)が違うでしょう? X線透過撮影の結果を詳(くわ)しく見ると、目では見えない内部の構造や状況を知ることができ、意外な発見をすることもあります。
徳島県立博物館では、2008年1月22日~3月30日まで、2階部門展示室(人文)で「レントゲンでのぞいた博物館の資料たち」を開催します。ここで紹介した以外にも、X線でのぞいてみた博物館資料を紹介します。ぜひともお越しください。