博物館ニューストップページ博物館ニュース068(2007年9月15日発行)ハネフクベの不思議な種子と果実(068号館蔵品紹介)

ハネフクベの不思議な種子と果実【館蔵品紹介】

植物担当 茨木靖

「おそらく日本の博物館で一番たくさん持っているんじゃないかしら!」興奮を抑えられません。珍しい物だから、一つでも手に入ればと思い、昨夏の企画展にあわせて取り寄せてもらえるよう頼んでおいたのです。その頼んでおいた物とは、ハネフクベの果実。

2005年5月20日。突然、大きな箱がいくつも博物館に届きました。なんだか、昔話の“舌切り雀(すずめ)”に出てくる「大きなつづらと小さなつづら」の話の様な感じて、す。わくわくしながら箱を聞けると、中には、なんとも大きな、スイ力ほどもある果実がどっさり入っていました。「これこれ!本で見たとおりだ!」思いの外たくさん手に入ってしまいました。

ハネフクベは、パプアニューギ二アなどの熱帯原産のウリ科植物(図1)。大型のつる植物で天にも届くほどの長さに伸び、大きな果実を付けます。そして、果実が熟すとその先端が割れて、中から羽を持った数百枚もの種子が飛び出します(図2)。ドイツの工卜リッヒという人が、飛行機を作ろうとして苦労していた時に、この種子をヒントにすることでグライダーを完成させることができたというとても有名なお話があります。ハネフクベの種子は、まさに天然のグライダーなのです。

図1 ハネフクベの蔓。天にも届く勢いで伸びている。海洋博覧会記念公園にて撮影。

図1 ハネフクベの蔓。天にも届く勢いで伸びている。海洋博覧会記念公園にて撮影。

図2ハネフクベの種子。羽をとった種子としては世界最大。翼の渡りが20cmにもなる。

図2ハネフクベの種子。羽をとった種子としては世界最大。翼の渡りが20cmにもなる。

さて、果実を見ながら考えました。“いったい、どうやってこの果実の中から種子が飛び出すのかしら?”薄い茶色の丸い果実は、よく見ると下の部分が真っ平らです。さらに、この部分をよく見ると、うっすら三本の切れ込みがあったり、中にはこの切れ込んだ部分が内側に巻き込んで口を開いているものもありました(図3)。“なるほどこうやって開くのか!”てっきり、下側のふたがはずれて、ぽろんと落ちるのだと思っていました。“良くできたものだなあ。”開いた口の中を見ると、中には、あるわあるわ、奥の壁(かべ)にびっしりと種子がへばりついています。すごい数です。
その中から一枚の種子を取り出して、実際に飛ばすことにしました。手に持って高く上げ、そっと離すと・・・ふわふわとわずかに上下しながら飛んでいきます。その様子は全く羽ばたいているようなのです。飛ばしてみてなるほどと思いました。ハネフクベの種子は、一つ一つが、大きな丸い果実の内側にへばりついているので、それぞれの翼(つばさ)が微妙(びみょう)に反(そ)っています。このため、うまく風を切って飛べるようなのです。“よくできているなあ!”じつは、ハネフクベの種子だけについては、専門のお店に行けば購入できます。ところが、これらは袋(ふくろ)に入れられ、平らに押しつぶされているためか、これまでなんどか試してみましたが、どれもこれほどにはうまく飛ばなかったのです。自然ってほんとにすごいなあとつくづく感じたのでした。

図3ハネフクベの果実。ぱっかりと空いた口の奥にたくさんの種子が見える。

図3ハネフクベの果実。ぱっかりと空いた口の奥にたくさんの種子が見える。

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