浜辺の植物 所変われば【情報ボックス】
植物担当 茨木靖
新潟県で行われた研究会に参加した時のことです。その日はとにかくすごい雨で、車のワイパーをかけても前が見えない様な状況でした。その日の目的地には、“バシクルモン”という植物の分布南限があるとのこと。まるでウルトラマンに出てくる怪獣(かいじゅう)のような名前のこの植物は、北海道の西南部から本州北部に分布するキョウチク卜ウ科の多年草。奇妙な名前はアイヌ語のpaskur(力ラス)-mun(草)に由来するとのことです。私も名前こそは聞いていましたが、見たこともない植物に興味津々(しんしん)でした。
見たぞ!バシクルモン
北の国の海岸は、岩がゴツゴツとして徳島の海とはずいぶん違って見えました。黒い岩の切り立った崖(がけ)道をくねくねと走り、広い浜に出るとその植物はありました。可愛らしい花が暗い砂浜をピンクに彩(いろど)っています。「これがバシクルモン!?きれいな花だなあ!」名前から、いかつい卜ゲトゲした植物を連想していたので、びっくりしてしまいました(図1)。
図1パシクルモン
オ二ハマダイコンにびっくり
次に私の目を釘付けにしたのは、オ二ハマダイコンでした(図2)。初めて見た時に「なんだ、これは! 」と、驚愕(きょうがく)してしまいました。巨大な、いかにもゴテゴテとしたエイリアンの様な植物。このグロテスクな様子はア力ザ科かと思わせますが、花はちゃんとアブラナ科であることを物語っていました(図3)。北アメリ力東岸中北部原産で、北方の海岸を中心に帰化しているそうです。
図2オニハマダイコン
図3オニハマダイコン花
所変われば
一通り観察を終えて、別の浜に移りました。ご案内いただいた先生が、一通り砂浜を見渡して「ああ、あんまりたいしたものないねえ。まあ、スナビキソウは満開だけど」と言われました。これを聞いてまたびっくり。「スナビキソウ!あれがスナビキソウなのか!」しかも辺り一面に白い花を咲(さ)かせています(図4)。これも徳島県では見られない植物です。一緒に行った神奈川県の博物館の方は、「神奈川県にも少しあるけど、大きさは、半分くらいで、とても貧弱なんだよね。」と、 驚いた様子です。雨など忘れて撮影(さつえい))しました。
図4スナビキソウ
このように浜辺の植物も地域でそれぞれ違っていて、本当に驚かされました。逆に徳島県では比較的よく見られるハマアザミやアゼトウナ、キキョウランなどは新潟県にはありませんので、新潟の人が見たらびっくりするかも知れません。他の地域に行ってみることで改めて徳島県の面白さを知ることができた観察会でした。