Q.トコロテンはどのようにしてつくるのですか?テングサが材料だそうですが【レファレンスQandA】
民俗担当 磯本宏紀
実はこんな質問を受けたところから着想したのが、博物館行事として実施している「トコロテンをつくろう」です。今年も4月29日と6月8日の連続2固の行事を実施しました。
まず、 4月29日の「トコロテンをつくろう①(出羽島を歩こう)」では牟岐町出羽島(むぎちょうでばじま)での歴史散歩の日程に、海岸でのテングサ拾いを組み込みました。本来は海底に生えるテングサを潜(もぐ)って採取することが多いのですが、この博物館行事では無理です。でも、海底のテングサが切れて海岸に流れ着いたナガレグサでも、トコロテンをつくることはできます。実際にテングサの産地である出羽島では、自家用から出荷用のテングサまでナガレグサを使うこともあります。行事では、許可を得て出羽島の海岸に流れ着いたテングサを拾うことにしました。とはいえ、テングサを拾えるかどうかは天候や海流次第です。この日は、幸いにしてたくさんのテングサを拾うことができました(図1)。
図1出羽島の海岸でテングサを拾う。
さて、すぐに拾ったテングサでトコロテンをつくれるわけではありません。テングサについた砂や木の枝などのゴミを落とすために水でさらし、それから天日で何度も乾燥させる作業を繰り返します(図2)。この作業を、行事参加者にはそれぞれ自宅て、やってもらうことにしました。実はこの作業に一番手間がかかるのです。
そうして迎えた6月8日の「トコロテンをつくろう②」の行事では、海岸で拾い、自分で乾燥させたテングサを持ち寄り、いよいよトコロテンをつくります。お湯を沸(わ)かしてテングサを煮込みます(図3)。この日の分量は、水1リットルに対し、テングサ20グラムの割合にしました。それから、酢(す)を少々入れておきます。これはテングサに含まれる固まる成分が溶(と)け出しやすくなるためです。こうして30分余り煮込んでいくと、徐々にとろみが出てきます。このとろみがトコロテンとして固まります。とろみが出てきたところで、テングサの繊維(せんい)が入らないよう布で漉(こ)し取ります(図4)。こうして漉し取ったどろどろの液を冷まして固まらせ、 トコロテン突きで突いて細く切るとトコロテンの出来上がりです。
図2天日でテングサを干す(出羽島) 。
図3テングサを煮込む。
図4テングサの煮汁を漉し取る
この行事を通して、「赤褐色(せっかっしょく)のテングサからトコロテンが出来るのは不思議!」、 「トコロテンをつくるのにこんなに手間がかかるとは思わなかった。」、「テングサの繊維が全部溶け出すのかと思っていましたが、そうではないのですね。」など、参加したみなさんにはいろんな発見があったようです。