徳島市内でプラタナスグンバイを発見【速報】
動物担当 山田量崇
概要
プラタナスグンバイCorythucha ciliata (Say,1832) は、カメムシ目グンバイムシ科に属する体長3 mm 程度の小さなカメムシです(図1)。「グンバイムシ」という名は、その体つきが相撲(すもう)の行司が手にする軍配に似ていることに由来しています。また、体の背面は網目状(あみめじょう)でステンドグラスのようにきらびやかな様相を呈(てい)することから、英名で「lace bug(レース・バグ)」と言います。小さくてきれいな昆虫ですが、実は、最近日本へ侵入してきた外来生物なのです。
図 1 プラタナスグンバイ(成虫)
図 2 葉裏の寄生状況。赤い矢印は幼虫。黒い斑点は排泄物。
北アメリカ原産のプラタナスグンバイは、2001年に愛知県名古屋市で初めて発見され、ほぼ同時に、東京都、横浜市、静岡市、松山市、北九州市からも確認されました(時広ら、2003)。その後、都市部を中心に急速に全国各地へ分布を拡げていきました。プラタナスグンバイは、街路樹や公園などに植栽(しょくさい)されているプラタナスを加害することが知られています。したがって、大きな被害が確認された都道府県では、病害虫防除所によって注意が勧告されています。我が国ではプラタナス以外にイタリアポプラからも発生し、さらに海外では、クルミ科、ブナ科、クワ科、マンサク科、カエデ科の植物などに寄生することが知られています。そのため、クルミやクワなどを栽培する農家への影響が懸念(けねん)されています。
四国では、2003年に愛媛県松山市で確認されたのが最初で、2006年には高知県からも見つかりました(山下、2008)。分布の拡がり方や近県の発生状況から判断すれば、徳島県でもすでに発生している可能性が高いと考え、街路樹として植栽されているプラタナスを気にかけるようになりました。植物担当の小川・茨木(いばらぎ)両学芸員によると、徳島市内では吉野川大橋南詰から中徳島町にかけてと北常三島町の交差点から中吉野町にかけて植えられているそうです。7~8 月にかけては、とくに変わった様子は見られませんでしたが、夏の猛暑(もうしょ)がやわらいだ9月の終わりになると、葉が所々黄~白化していることに気づきました。すぐに調べてみたところ、葉裏(はうら)に集団で発生しているプラタナスグンバイを確認したのです。他のプラナタスも注意深く観察した結果、ほとんどの木で発生しており、発生密度の高い葉では葉の一面が白色に変色していました。
被害がひどい場合、植栽されているプラタナスの景観は著(いちじる)しく損(そこ)なわれてしまいます。それだけでなく、成虫が街路樹周辺の住宅へ飛来し、洗濯物の衣服や布団に付着するなど不快害虫としても報告されています(徳丸、2009)。そのため、プラタナスグンバイを防除するための薬剤が開発されているほどです。幸いにも、今回は甚大(じんだい)な被害が見られませんでしたが、徳島県での情報は十分に蓄積(ちくせき)されていません。今後も注意深く調べていく必要があります。
参考文献
時広五朗ら(2003)植防研報、(39): 85-87.
徳丸 晋(2009)今月の農業、53(2): 88-91.
山下 泉(2008)げんせい、(84)20.