吉野川の砂金【野外博物館】
地学担当 中尾賢一
砂金(さきん)とは、川でとれる砂状の自然金のことです。かつて吉野川やその支流で砂金の採掘が行われたことがあり、徳島県内外の町村史に記録されていることもあります。しかし当時の砂金や採掘道具などは、県内にはほとんど残されていません。
2009年、“ 砂金掘り師”の丸岡正明さん(香川県在住)から吉野川産の実物の砂金の寄贈を受けました(図1)。魚島学芸員に蛍光(けいこう)X線分析を依頼したところ、確かに金であり、少量の銀を含むことが確認できました。
図1 美馬市の吉野川で採集された砂金
図2 パンニング皿。地学用品や鉱物標本などを扱う店で、安いものは 1000 円くらいで入手可能。価格分を砂金採りで取り戻すには、かなりの時間と根気が必要と思われる。
寄贈を受けた際、砂金採りにご一緒させていただきました。砂金の選り分けには、パンニング皿(図2)を使います。約6時間で丸岡さんは数粒採集しましたが、私は全く見つけられませんでした。採算が取れる量でありませんが、現在でも吉野川で砂金が採れること自体が私にとっては驚きでした。と同時に、まったくの初心者がいきなりやってもなかなか見つけられないことも実感できました。丸岡さんを見ていると、ポイントの選び方や土砂の採集・選別の方法、道具の使い方などいろいろなところに秘訣(ひけつ)があり、かなりの時間をかけて努力されたことがわかります。お聞きしたところ、愛媛県のマイントピア別子(砂金採り体験パーク)に通いつめて要領をつかんだ上で天然の砂金採りを始めたそうです。
砂金の名前はよく知られていると思いますが、実物を見たことがある人はあまり多くないでしょう。常設展示室の「青石はかたる」のコーナーで展示していますので、ぜひご覧ください。