絶滅危惧種(ぜつめつきぐしゅ)ハマグリとその近縁種(きんえんしゅ)【情報ボックス】
地学担当 中尾賢一
ハマグリ(図1)は日本の干潟(ひがた)たを代表する二枚貝のひとつです。1980年代以降、生息地の埋立(うめたて)や汚染(おせん)、過剰漁獲(かじょうぎょかく)によって各地で消滅(しょうめつ)・減少し、漁獲量(ぎょかくりょう)は1970年代の20%~5%以下になっています。今年、環境省が発表した第4次レッドリストでは絶滅危惧II類に指定されました。
ハマグリのなかま(ハマグリ属(ぞく))のうち、本州~九州に自然分布しているのは、ハマグリとチョウセンハマグリです。このほかに朝鮮(ちょうせん)半島や中国大陸沿岸部原産の外来種(がいらいしゅ)であるシナハマグリがいます。この3種の特徴(とくちょう)を簡単にまとめておきます。
ハマグリ Meretrix lusoria (図1)
図 1 ハマグリ.熊本県産(熊本市内の鮮魚店で購入)
本州北部~九州南部および韓国(かんこく)南部の砂質(さしつ)干潟に分布しています。殻(から)は薄(うす)く、丸みを帯びた三角形で光沢(こうたく)があります。斑紋(はんもん)は多様(たよう)です。熊本県の有明海(ありあけかい)南部や三重県の伊勢湾(いせわん)などが現在の主要産地です。県内では吉野川の干潟などに生息し、徳島市内の鮮魚店(せんぎょてん)て んで販売(はんばい)されているこ とがあります(図2)。
図 2 徳島市内の鮮魚店で販売されていたハマグリ(2003 年 12 月撮影).
チョウセンハマグリ Meretrix lamarckii (図3)
図 3 チョウセンハマグリ.宮崎県日向市産(宮崎県内の鮮魚店で購入)
外海(がいかい)に面した砂浜の潮間帯(ちょうかんたい)~潮下帯(ちょうかたい)に生息しています。殻は厚く、ハマグリより横長で、より三角形に近い形をしています。斑紋は単調で、模様(もよう)のない個体も多く見られます。茨城県の鹿島灘(かしまなだ)や宮崎県日向市(ひゅうがし)が主要産地です。徳島県南部の海岸では貝殻を拾うことができます。
シナハマグリ Meretrix petechialis ( 図4)
図 4 シナハマグリ.原産地不明(徳島県内のスーパーマーケットで購入).
ハマグリと同様、河口(かこう)うや内湾(ないわん)の干潟に生息しています。全体的に形が丸く、光沢は貧弱です。赤褐色(せきかっしょく)の斑点(はんてん)やジグザグ模様がよく見られます。吉野川の河口を含む各地の干潟で放流され、ハマグリと交雑(こうざつ)を起こしているとの報告があります。食料品店などで見かける「はまぐり」の多くは本種です。
参考文献
内野明徳(編).2009.肥後ハマグリの資源管理とブランド化.成文堂.
日本ベントス学会(編).2012.干潟の絶滅危惧動物図鑑.東海大学出版会