博物館ニューストップページ博物館ニュース090(2013年3月25日発行)博物館に保管されているタイプ標本(090号館蔵品紹介)

博物館に保管されているタイプ標本【館蔵品紹介】

動物担当山田量崇

徳島県立博物館にはさまざまな標本が保管されていますが、学術的に特別な意味をもつものもいくつかあります。そのひとつが「タイプ標本」です。新種を発表する時に世界共通の名前である「学名」を新たに与えますが、その際、証拠(しょうこ)となる標本をタイプ標本として指定し、記載論文(きさいろんぶん)に明記します。さらに、そのうちの1 個体を「ホロタイプ(完模式標本(かんもしきひょうほん))」として指定します。タイプ標本にはこの他にも「パラタイプ(副模式標本(ふくもしきひょうほん))」や「レクトタイプ(後模式標本(こうもしきひょうほん)」などいくつかの種類がありますが、「国際動物命名規約(こくさいどうぶつめいめいきやく」(動物の名前の付け方に関する国際的なルール)では、こうしたタイプ標本を博物館や大学などの公的な研究機関に預け、研究に活用できるよう安全に保管することが勧告されています。ここでは、最近当館に寄贈された無脊椎動物(むせきついどうぶつ)のタイプ標本を紹介します。

アナンムシオイガイ(図1)

Cipangocharax ananensis Yano, Tada & Matsuda, 2013

徳島県阿南市のごく限られた石灰岩地帯に生息する微小(びしょう)な陸貝(りくがい)で、最近(2013年1月)新種として日本貝類学会誌「VENUS」に発表されました。これまでに十数個体しか採集されていない希少性(きしょうせい)の高い種です。ホロタイプは国立科学博物館に保管されていますが、パラタイプの3個体が著者の一人松田春菜博士によって当館に寄贈されました。

図1 アナンムシオイガイ(写真提供:松田春菜氏)

図1 アナンムシオイガイ(写真提供:松田春菜氏)

クヌギズイムシハナカメムシ(仮称)(図2)

Lyctocoris ichikawai Yamada & Yasunaga, 2012

2002年に香川大学教授(当時)の市川俊英博士によって発見されたカメムシの一種で、2012年に電子ジャーナル誌「Zootaxa」に新種として発表されました。香川県と熊本県の樹液(じゅえき)が滲出(しんしゅつ)する限られたクヌギでしか見つかっていない珍しい種で、詳しい生態は明らかにされていません。新種記載に用いたタイプ標本は当館にて保管されていますが、パラタイプの一部はアメリカ自然史博物館にて保管されています。

図 2 クヌギズイムシハナカメムシのホロタイプ

図 2 クヌギズイムシハナカメムシのホロタイプ

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