Q.徳島県から恐竜(きょうりゅう)の化石が発見されてるって、本当ですか?【レファレンスQandA】
地学担当 辻野泰之
徳島県から恐竜の化石は、発見されています。徳島県の恐竜化石は、1994年に高知大学の大学院生が地質調査中に勝浦町(かつうらちょう)から発見しました(図1)。勝浦町周辺には、約1億3000万年~1億年前の物部川層群(ものべがわそうぐん)と呼ばれる白亜紀前期(はくあきぜんき)の地層が分布しています。物部川層群は、淡水(たんすい)から汽水域(きすいいき)(海と川の間にある海水と淡水がまざる干潟(ひがた)のような環境)で堆積(たいせき)した地層(立川層(たつかわそう))と海で堆積した地層(羽ノ浦層(はのうらそう)、傍示層(ほうじそう)、藤川層(ふじかわそう))でできており、恐竜化石は、淡水や汽水域で堆積した地層から発見されました。
図1 恐竜の化石が発見された勝浦町の沢
化石は、約1.5cmと小さく、光沢のある黒色をしており、一見、炭化した植物化石のようにも見えます(図2)。しかし、研究の結果、化石の特徴から植物食恐竜のイグアノドン科の歯だと推定されました(図3)。
図 2 徳島県勝浦町から発見されたイグアノドン科の歯化石
徳島県で発見された恐竜化石は、この1つの標本だけですが、四国で発見された唯一の恐竜化石です。一方、近年、福井県勝山市や兵庫県丹波市から続々と恐竜の化石が発見されています。福井県や兵庫県の恐竜化石も淡水や汽水域で堆積した地層から発見されたものです。恐竜は陸上で生きていた生物です。そのため、恐竜化石は、湖や川、干潟などの陸や陸近くで堆積した地層から発見されることが多いのです。福井県や兵庫県には、淡水や汽水域で堆積した地層がたくさん露出しています。それに対して、徳島県に分布する同時代の地層のほとんどは、海で堆積した地層で、淡水や汽水域で堆積した地層はわずかです。そのため、福井県や兵庫県のようにたくさんの恐竜化石の発見は難しいかもしれません。
しかし、徳島から恐竜の化石が産出しているのも事実です。今後、第二、第三の恐竜化石が見つかることが期待されます。
図3 イグアノドン科の恐竜のイメージ図 絵:大塚吉雄氏