博物館ニューストップページ博物館ニュース093(2013年12月1日発行)最近日本に侵入した貯穀害虫の天敵 クロセスジハナカメムシ(093号速報)

最近日本に侵入した貯穀害虫の天敵 クロセスジハナカメムシ【速報】

動物担当 山田量崇

米や麦などの穀物類が保管されている貯蔵穀物所(ちょぞうこくもつじょ)には、時にさまざまな昆虫が発生します。それらはしばしば海外から輸入される穀物類とともにやってくるため、貯蔵穀物所には在来種ばかりではなく、他地域から無作為(むさくい)に移入された外来種も多く見つかります。

2009年頃から関東地方の複数の工場内で、体長2mm程度の微小なカメムシが確認されるようになりました。この正体不明のカメムシは、ハナカメムシ科に属する日本未記録のDufouriellus ater と同定され、‘クロセスジハナカメムシ’という和名が与えられました。ヨーロッパ原産ですが、アメリカ大陸やハワイ、中国などへ侵入しています。野外では樹皮下(じゅひか)に生息しますが、貯蔵穀物所や貯木所(ちょぼくじょ)でもよく発生するため、穀物や木材の運搬とともに自然分布域外へ拡がっていったと考えられています。また、そういった施設では害虫の天敵としても報告されています。本種はその後、栃木県の野外から見つかり、さらについ最近、神戸市のポートアイランド(人工島)で、街路樹の樹皮下からも発見されました。

図 1 クロセスジハナカメムシ(長島聖大氏撮影)

図 1 クロセスジハナカメムシ(長島聖大氏撮影)

このように、本種が人為的に世界各地へ拡がりつつあること、屋内で発生していること、主に関東地方で見つかっていることなどから、近年になって日本へ侵入した外来昆虫であることが判明しました。また、神戸市でも発見されたことから、正確な侵入経路や侵入時期などは不明であるものの、日本へは同一地域から侵入して各地へ拡がったのではなく、複数の地域にそれぞれ侵入した可能性も否定できません。現時点で本種の分布は主に関東地方に限られていますが、今後、海外からの物資の窓口である港湾地域や空港周辺を中心に発見されるかもしれません。

図 2 本種が発見されたトウカエデの街路樹(神戸市ポートアイランド)(田中良尚氏撮影)

図 2 本種が発見されたトウカエデの街路樹(神戸市ポートアイランド)(田中良尚氏撮影)


参考文献:山田量崇・中山恒友(2013)日本応用動物昆虫学会誌,57: 185-189.

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