博物館ニューストップページ博物館ニュース096(2024年9月15日発行)鈕にシカの描かれた銅鐸 伝 榎瀬(えのきぜ)銅鐸(複製品)(096号館蔵品)

鈕にシカの描かれた銅鐸 伝 瀬(えのきぜ)銅鐸(複製品)【館蔵品紹介】

考古担当 高島芳弘

徳島県では約50 個の銅鐸(どうたく)が発見されています。全国で約500 個の銅鐸が出土しているので、その1 割が徳島県で見つかっていることになります。徳島は島根、兵庫、滋賀、愛知、和歌山、大阪などとともに銅鐸の多く発見される地域です。

伝榎瀬(えのきぜ)銅鐸は、徳島県内で、ただひとつ絵画が描かれている銅鐸です。明治初年に板野郡川内(かわうち)村(徳島市川内町)の榎瀬より出土したと伝えられていますが、吉野川河口近くの沖積地のど真ん中から、弥生時代の銅鐸が出土することについて、否定的な見解を述べる人もいます。現在、辰馬(たつうま)考古資料館の所蔵となっています。博物館は、文化の森の新館オープンにあわせて複製品をつくり、常設展で展示しています。

第1図 銅鐸の部分名称

第1図 銅鐸の部分名称

 

この銅鐸は高さ46.1cm で、重さは4.46kgあります。外縁付鈕式(がいえんつきちゅうしき)で、身の文様は流水文ですが、中央の区画文様が両面でそれぞれ異なっています。片方は斜格子文で、もう一方は連続渦巻文となっています。鰭から鈕の外縁にかけては、片面は鋸歯(きょし)文で飾られ、他面はワラビ手文、連続渦巻き文が描かれています。
シカの絵はワラビ手文、連続渦巻き文が描かれた面の鈕の内側に左右対称に1 匹ずつが配置されています。向かって左側はあまり鮮明でありません。右側のシカを見ると、V字型の頭を内側に向け細長いなすび型の胴体に、前足、後ろ足と2本ずつまっすぐに付けられています。

図2 鈕の片面に描かれた渦巻き文とシカ

図2 鈕の片面に描かれた渦巻き文とシカ

シカは銅鐸に描かれる画材としては最も多く、線画でなすび型の胴体を描いたものが大部分です。狩猟(しゅりょう)の対象として描かれる場合もありますが、単独であるいは複数のシカを組み合わせて描かれる場合が多くみられます。弥生時代には、鹿角(ろっかく)の成長と稲の生長を重ね合わせ、シカを土地の精霊(せいれい)として神聖視して、銅鐸や土器に描かれる画材として多く取り上げたのだと考えられています。

図3 伝 榎瀬銅鐸の表裏

図3 伝 榎瀬銅鐸の表裏

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