毒棘(どくきょく)を持つ魚アカザ【情報ボックス】
動物担当 佐藤陽一
川遊びをしていると時々石の下から赤っぽい小魚がくねくねと出てくることがあります。これは徳島県では「アカザシ」、「アカギギ」、「オイシャハン」などと呼ばれているナマズの仲間(ナマズ目アカザ科)のアカザという魚です。
ナマズの仲間なのでヒゲがあり上顎(うわあご)に2対、下顎(したあご)に2対あります。本州と四国、九州の水のきれいな上流域から中流域の瀬やトロの岸ぎわでよくみられます。夜行性で日中は石の下にいますが、夜になると出てきて水生昆虫などを補食します。産卵期は初夏から夏にかけてで、ゼリー質におおわれた卵塊を瀬の石の下に産み付け、オスが保護します。
さて、日本の川魚で毒をもつ魚はほとんどいないのですが、この魚だけは明らかに背びれと胸びれに毒のある棘(きょく)を持っています(同じナマズ目のギギ科も毒棘を持つといわれていますが、刺されたという話はほとんど聞きません)。棘は皮膚でおおわれており、一見すると棘があるようには見えないので要注意です。ちょっと触ったくらいでは刺されないのですが、魚をギュッと握ったりすると刺されます。ただし、痛みはそれほど強くはなく、チクチクした痛みで30分ほどでおさまるようです(和田、2004)。
図 1 アカザの生息地(徳島市入田町、吉野川水系鮎喰川)
図 2 アカザ(標準体長 63.2 mm、2014 年 8 月 20 日、図 1の場所で採集)
アカザは毒魚ですが、環境がよくないと生息できない魚なので、現在では減少傾向にあります。環境省のレッドリスト(2013)で絶滅危惧II 類、四国では高知県(2002)と愛媛県(2003)で絶滅危惧IB 類、香川県(2004)で絶滅危惧I 類、そして徳島県(2014)で絶滅危惧II 類に指定されています。四国内では徳島県が絶滅の危険度がもっとも低く、吉野川や勝浦川、那賀川、福井川、牟岐川、海部川などに広く分布します。ただし、海部川へは人が持ち込んだ可能性があります。
参考文献
和田康夫(2004)毒棘を持つ淡水魚.臨床皮膚科,58(5):11-14.