山里に群生して咲くタンポポ 人々が元気に暮らしているバロメーター【野外博物館】
植物担当 小川誠
春になると、吉野川の土手ではタンポポが群生して咲いています。このタンポポはカンサイタンポポという種類です。自分だけでタネができるセイヨウタンポポのような外来タンポポやシロバナタンポポとは違い、カンサイタンポポは他の株がないとタネができません。そのため、群生して、一斉に花を咲かせます。
カンサイタンポポは、県内では広く分布していますが、西の方に行くにしたがって、また、標高の高い山中に行くにしたがって分布が少なくなってきます。当館では西日本一帯でタンポポの分布を調べる「タンポポ調査・西日本2015」にあわせて、たくさんの方々に呼びかけて県内のタンポポの分布を調べています。
その調査で筆者もタンポポを探して各地を回ることがありますが、しばしば山の中にある集落で、群生して咲くカンサイタンポポを見かけることがあります。そこにたどり着くまでは、外来タンポポやシロバナタンポポが道ばたにぽつりぽつりと咲いているだけでした。そうした場所で共通しているのは、道ばたや畑の周辺がよく草刈りをされていることです。庭もよく手入れされており、桃や桜の花が咲いていたりして、桃源郷(とうげんきょう)に迷い込んだような錯覚を受けます。
徳島県三好郡東みよし町西庄地区のカンサイタンポポの群落
愛媛県四国中央市のカンサイタンポポの群落
県内の山村では過疎化と高齢化が進み、地図には載っているものの、その集落に行ってみると人が住んでおらず、廃屋(はいおく)のみとなっている場合があります。そのような場所では一生懸命さがしてもタンポポは見つからず、かろうじて道ばたに残っていたタンポポも周りが背の高い草木に覆われて、風前の灯ともしび火となっているケースもありました。その地域で暮らす人々が草刈りなどの活動をすることによって、タンポポが咲く明るい草地が維持されています。
高知県長岡郡大豊町のカンサイタンポポの群落
今までのタンポポ調査では、外来種と在来種の割合に注目して都市化の状況を記録してきました。一方で、山里にカンサイタンポポが群生して咲いていると、地域の人々が元気に暮らしているということがわかります。タンポポの分布を継続的に記録すると、そうしたバロメーターとして使うことができ、タンポポ調査の新たな視点として注目されています。ぜひ皆さんもタンポポ調査に参加してみてください。
タンポポ調査・西日本2015
調査期間:2015 年3 月1 日~5 月31 日
詳しくはホームページをご覧ください。
http://www.gonhana.sakura.ne.jp/tanpopo2015/