Q.トピックコーナーで展示した土器の年代は、どうやって決めたのですか?【レファレンスQandA】
考古担当 岡本治代
博物館では、平成26年9月2日から10月26日までトピックコーナーで、図1のような海岸で漂着物として採集された土器・陶磁器を展示していました。
図 1 小松海岸で採集された弥生土器長頸壷(弥生時代中期の終わりごろ)
考古学者が遺物の年代を決める方法には、「放射性炭素同位体法」など理化学的な年代決定法もありますが、トピックコーナーで展示した資料の年代を決める際には、遺物の「質(種類)」と「形」に注目しました。今回展示した資料は、粘土を原料とした焼き物である、「土器」「須恵器(すえき)」「瓦器(がき)」「陶器」と、陶石(とうせき)を原料とした「磁器」の全部で5種類に分けることができます。これらの焼き物は、それぞれ日本で作られたり外国から輸入されたりするようになったのがいつからなのか、これまでの研究で明らかにされているので、焼き物の質を見ればだいたいどれくらいの時期よりも新しいものなのか、といったことは判断できます。
次に、器種(きしゅ)遺物の用途による分類)や、具体的な時期を決めるために、注目するのは「形」です。たとえばここ10年間で携帯電話の形が変化してきたように、物の形は時代の流れによって徐々に変わっていきます。私たち考古学者は、遺跡で出土したいくつかの遺物を見比べて、まずは器種ごとに分類します。さらに、出土した地層との関係も考えながら、その器種の中で似ているものを順番に並べていきます。こうして作られるのが、図2のような「編年(へんねん)表」です。
図 2 奈良県唐古出土弥生土器編年表 奈良県唐古遺跡で作られた弥生土器の編年表。第Ⅰ様式から第Ⅴ様式の順に、器種の組み合わせや土器の型式が変化してきたことを示している(第Ⅰ様式が弥生時代前期、第Ⅱ様式から第Ⅳ様式が中期、第Ⅴ様式が後期)。徳島県内の弥生土器の編年も、このような畿内の土器編年を参考に作られている(挿図出典 京都帝国大学文学部考古学教室編 1943『大和唐古弥生式遺跡の研究』桑名文星堂:第 66 図)。
図1 の弥生土器の年代は、徳島や近畿の弥生土器の編年表と見比べて、時期を特定しました。考古資料の年代は、このような地道な作業の積み重ねによって明らかにされているのです。