博物館ニューストップページ博物館ニュース098(2015年3月25日発行)Q.徳島にも厚い火山灰層があると聞いたのですが、いつ、どこから降ってきたのですか?(098号QandA)

Q.徳島にも厚い火山灰層があると聞いたのですが、いつ、どこから降ってきたのですか?【レファレンスQandA】

地学担当 中尾賢一

Q.徳島では火山は縁遠(えんどお)い話と思うかもしれませんが、ここ10万年以内にも、おもに九州からたびたび火山灰が降ってきています。これらの火山灰層は、地層の時代を知る良い手がかりになるのですが、自然災害としてはたいへん恐ろしいものです。

図1は、東みよし町の地層に含まれている9万年前の阿蘇(あそ)4火山灰です。阿蘇4噴火は日本列島最大級の噴火で、このとき発生した火砕流(かさいりゅう)は鹿児島県以外の九州全県と山口県に達し、これらの地域を焼き尽くしました。遠く離れた北海道では厚さ15cmもの火山灰が降ったことが知られています。

図1 阿蘇4火山灰に対比されている長手テフラ 東みよし町足代長手

図1 阿蘇4火山灰に対比されている長手テフラ 東みよし町足代長手

 

図2 姶良 T n火山灰 那賀町海川西

図2は、那賀町で見つかった姶良(あいら)Tn 火山灰です。約3万年前に姶良カルデラ(鹿児島市桜島(さくらじま)の周辺)から噴出しました。同時に噴出した入戸(いと)火砕流は南九州を焼き払い、周囲にはシラスとよばれる火山噴出物が厚くつもり、シラス台地をつくりました。

図2 姶良 T n火山灰 那賀町海川西

 

図3 鬼界アカホヤ火山灰 美馬市美馬町入倉

図3は、美馬市で見られた鬼界(きかい)アカホヤ火山灰で、厚さが30cm あります。7,300年前に鹿児島湾の南の鬼界カルデラから噴出した火山灰で、この噴火によって南九州の縄文人がほぼ全滅したと考えられています。

図3 鬼界アカホヤ火山灰 美馬市美馬町入倉

 

これら3回の噴火は、巨大カルデラ噴火とよばれるタイプの噴火です。このような噴火が発生すれば、火砕流に直接巻(ま)き込(こ)まれなくても、火山灰が土石流(どせきりゅう)を起こしたり、全地球的に気温が低下するなど、深刻な悪影響が長年にわたって続くでしょう。

日本列島では、約1万年に一度の割合で、このような巨大噴火が起きています。火山は温泉や美しい景観をもたらすなどの恩恵もありますが、たまに想像を絶する大災害を起こすことも、日本列島にすむ私たちは知っておいた方がよいと思います。

文献:森江ほか(2001)第四紀研究40,331-336;植木(2001)北川地域の地質 第11章 第四系.5万分の1地質図幅;西山ほか(2009)阿波学会紀要(55),1-12.

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