Q.最近、徳島県で新たな外来昆虫が確認されたそうですが、何ですか?【レファレンスQandA】
動物担当 山田量崇
A.クロジャコウカミキリAromia bungii のことです(図1)。体長40 ミリメートルほどの大型のカミキリムシ科の昆虫で、光沢のある黒色の体に明るい赤色の前胸背(ぜんきょうはい)をもつなかなかの美麗種(びれいしゅ)です。幼虫がサクラ、ウメ、モモ、カキ、ポプラなどの樹木に寄生しますが、加害が激しいと枯死にいたることもあります。幼虫は樹木の辺材(へんざい)や心(しん)材の内部で2~3 年過ごすため、いったん寄生されるとなかなか防除(ぼうじょ)できません。外観の美しさとはうらはらに、農業等に重大な影響を及ぼすことが知られています。
図 1 クロジャコウカミキリのオス
原産地はベトナム北部や中国南部で、台湾や朝鮮半島など近隣の東アジア地域へは人為的に侵入しています。また、2011年頃からヨーロッパ諸国でも確認されはじめ、ドイツやイタリアでは一時的に定着した地域もあるそうです。2008年にはアメリカのワシントンDCで、中国や台湾からの輸入木材からこのカミキリムシが発見されていますが、本種の各地への拡がりはこうした非意図的な導入がほとんどでしょう。
日本では2012年に愛知県ではじめて発見されました。翌年には埼玉県でも確認されています。そして、2015年7月に、徳島県板野町と大阪府大阪狭山市においてほぼ同時発生的に本種が発見されたのです。
徳島県板野町で被害が確認されたのはモモとサクラです。それらの幹には成虫の脱出孔(こう)、根元には大量のフラス(幼虫の糞(ふん)と木くず)が見られたほか(図2)、複数の成虫と老熟した幼虫も見つかりました。こうした状況から、数年前にはすでに侵入していた可能性が考えられます。7 月末に徳島県立農林水産総合技術支援センター病害虫防除所から特殊報が出され、本種の発生についての状況報告と、注意喚起がされています。本種を発見したらまずは情報をお寄せください。
図 2 モモの木の根元に落ちた大量のフラス