身の回りの植物を調べよう!【野外博物館】
植物担当 茨木靖
博物館への出勤途中で見慣れない草を見つけました。とても小さな草で、大きさは5㎝ほど。葉っぱの大きさは5㎜もないほどです。毎日前を通る度に、遠目に見て「何だろう?」と思っていたのですが、朝のせわしい時間ということもあり、そのままにして時が過ぎていました。そうこうする内、“ 中級クラス植物観察会”という普及行事の日になりました。
この行事は、一年を通して、博物館のある文化の森総合公園周辺で植物の調査を行い、名前の調べ方や、標本の作成・整理の方法などを学んでいただくもので、最終的には、文化の森周辺の植物相リストの作成を目指しています。
ちょうどよい機会なので、この草を教材にして植物の名前の調べ方などを学んでいただくことにしました。具体的には、熱心な参加者のお一人、小川英則(おがわひでのり)さんに詳しく調べていただくことになりました。そこで改めて皆で足元を見ながら歩いてみると、この植物は博物館の前から公園内の文書館にかけての路傍にかなりの量が生えていることがわかりましたので、サンプルを採って帰ることにしました。数日後、小川さんから電子メールが届きました。この草について詳しく調べてくださったのです。それによると、「この草は、アワゴケであり、オオバコ科の1年草で、関東地方以西の日当たりの悪いやや湿ったところに生える。茎は長さ1~6㎝で、よく分枝して地を這(は)い、全草無毛。葉は対生(たいせい)して、長さ2~6㎜の倒卵形(とうらんけい)または卵円形(らんえんけい)で全縁。1㎜前後の葉柄(ようへい)がある。果実は先端がへこんだ、長さ1~2㎜の軍配形(ぐんぱいがた)で無柄。ふちはやや翼状に薄くなる。似たものに外来種のアメリカアワゴケがあるが、葉幅約1㎜と小型で、果柄(かへい)があることと(0.5~1㎜)、果実の稜(りょう)は翼状にならないなどの点で区別できる」と書かれていました。
図1 道ばたで見つけたアワゴケ
図2 アワゴケの拡大写真。中央の茶色い物が果実。ふちはやや翼状に薄くなるのがわかる(小川英則さん撮影)
図3 葉。しゃもじ型の柄の部分が葉柄で1㎜程度の長さがある(小川英則さん撮影)
なるほど、確かにこの植物と特徴がぴったりです。類似種との違いも明らかになりました。私たちの身の回りには、本当にたくさんの種類の植物が生えています。しかし、特に関心を持って見なければ、その存在に気付くことはありません。是非多くの方々に博物館での行事に参加いただき、身近な植物についての知識を持っていただければと思っています。