博物館ニューストップページ博物館ニュース108(2017年9月15日発行)阿波国人書画張交屏風(108号情報ボックス)

阿波国人書画張交屏風【情報ボックス】

美術工芸担当 大橋俊雄

 本年5月に、個人の方から資料の寄贈を受けました。その方は、先祖が江戸から明治時代にかけて、今の徳島市西船場(にしせんば)で藍(あい)取引に関わる商売を営んでいました。

 寄贈資料の中に、6曲(きょく)1隻(せき)(6つの面が蛇腹(じゃばら)状に横に連なる形式)の屏風(びょうぶ)があります。反故紙(ほごし)を張(は)り合わせて作られた覆(おお)い紙には、屏風の背に当たるところに「阿波国人書画張交(あわのくにびとしょがはりまぜ)」と墨(すみ)で書かれています。

 屏風を広げると、各面に4 ~ 6 枚の色紙(しきし) や短冊(たんざく)、扇面(せんめん)が張られ、漢詩(かんし)や俳句(はいく) 、和歌(わか)、画(え)が認(したため)られています。それらの作者は、幕末から明治にかけて活躍した、徳島の文人墨客(ぶんじんぼっきゃく)や画家(がか)たちです。

 以下、向かって右の面から順に、作者名と内容を挙げておきます。ただし、作者名は書かれている画号(がごう)のままでなく、理解しやすいように表記を改めています。また画面が四角い作品は表示を省略し、短冊(たんざく)や扇面(せんめん)のみ注記します。

第1面

 答島桐蔭書七言絶句(こたじまとういんしょしちごんぜっく) ・霰笠(せんりつ)書俳句(短冊)・□〈判読未詳〉晋筆(ひつ)草花図(ず)(短冊)・浜口南涯(はまぐちなんがい)筆果蔬干魚(かそひうお)図(扇面)・守住貫魚(もりずみつらな)筆宝珠(ほうじゅ)図

第2面

 浜口南涯筆旭(あさひ)に鶯(うぐいす)図(扇面)・浜口南涯筆唐人物(とうじんぶつ)図・森魚淵(もりなぶち)筆春草図・橋本晩翠(ばんすい)書七言絶句・芳林窟夢堂(ほうりんくつむどう)書俳句(短冊)・浜口南涯筆果蔬図

第3面 

 雲明(うんめい)筆滝時鳥(たきにほととぎす)図・浜口南涯筆桜図〈図1〉・短冊1枚欠・浜口南涯筆雀踊(すずめおどり)図(扇面)

図 1 浜口南涯筆 桜図

図 1 浜口南涯筆 桜図

第4面


 松坡(しょうは)書俳句(短冊)・安藤止堂(あんどうしどう)筆山水図(短冊)・柴秋邨(しばしゅうそん)書五言絶句(ごごんぜっく) ・松浦春挙(まつうらしゅんきょ)筆狗(いぬ)図(扇面)・片山菊溪(きくけい)筆草花図

第5面

 浜口南涯筆月自画賛(つきじがさん)・鈴江貫中(すずえつらなか)筆雀(すずめ)図・佐香貫古(さこうつらふる)筆猿人物(さるじんぶつ)図・西宣行(にしのりゆき)書七言絶句・佐香貫古筆唐子(からこ)図〈図2〉

図 2 佐香貫古筆 唐子図

図 2 佐香貫古筆 唐子図

第6面

 鉄復堂(てつふくどう)書七言絶句・藤桃斎(ふじとうさい)筆猪(いのしし)図(扇面)・滝山霞崖(たきやまかがい)筆魚介(ぎょかい)図〈図3〉・新居水竹(にいすいちく)書五言律詩(りっし)(短冊)・小倉真阪(おぐらまさか)書和歌(短冊)・浜口南涯筆草花図

図3 滝山霞崖筆 魚介図

図3 滝山霞崖筆 魚介図


登場する作者の名は、県外ではあまり馴染(なじ)みがありません。しかし地元で歴史や古書画(こしょが)に関心をお持ちの方でしたら、一度は耳にされたことがあるのではないでしょうか。かく言う私は、屏風を見て、初めて存在に気づいた画家がいるので驚いています。
最後に付け加えると、浜口南涯(1801-1865)の作が8点もあり目を引きます。彼は、現在の徳島市佐古三番町(さこさんばんちょう)の出で、京都で医学を修(おさ)め、松村景文(まつむらけいぶん)に画を学び、徳島に帰ると西船場で医者をしながら画筆(えふで)を執(と)ったと云われています。屏風を伝えていた家とは、近所同士で往(ゆ)き来(き)があったのかも知れません。

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