博物館ニューストップページ博物館ニュース108(2017年9月15日発行)Q.浜辺で拾ったニッパヤシを育てたいのですが?(108号QandA)

Q.浜辺で拾ったニッパヤシを育てたいのですが?【レファレンスQandA】

植物担当 茨木靖

浜辺を歩いていると見知らぬ種子や実を拾うことがあります。牟岐町にお住まいの浦岡由依(うらおかゆい)さんは、海陽町(かいようちょう)の大砂(おおすな)海岸で、漂着(ひょうちゃく)物を探す“ビーチコーミング”をしていて、ニッパヤシを拾いました。今回は、このヤシの実が、その後どのようになったかについてご紹介したいと思います。

ニッパヤシは、世界の熱帯から亜熱帯の干潟(ひがた)などに生えるマングローブ植物です。ベトナムなどの東南アジアに行くと、海に近い河口の水の中から、ニョキニョキといきなり葉を茂(しげ)らせている様子に驚かされます。浦岡さんの拾われたニッパヤシは、拾われたとき既(すで)に芽を出していました(図1)。そこで栽培してみることにしたそうです。

図1 海岸で見つかったニッパヤシ( 撮影:浦岡由依さん )

図1 海岸で見つかったニッパヤシ( 撮影:浦岡由依さん )

博物館にも栽培方法を尋(たず)ねられたので、私の経験や生育地の環境から“田んぼの泥のような土に植えること”と、“冬でもとにかく暖かくすること”の二点を中心にお話ししました。ただ、アドバイスはしたものの、私自身は沖縄など県外で拾ったニッパヤシの果実を栽培したところ、冬の寒さで枯らしてしまったので、はたしてどうなることかと不安でした。

幸いなことに、浦岡さんは植物の栽培にとても慣れているようで、田んぼの土の代わりに購入した“睡蓮(すいれん)の土”を、4リットルのペットボトルを切って作った特製の鉢に入れ、上手に栽培を開始されました。ニッパヤシを拾ったのは、2016年の9月、寒くなるまでに何とか根と葉をしっかり生長させておきたいところです。

々の熱心な世話の甲斐(かい)あって、植えてから11日目には発根(はっこん)を確認、さらに21日目には新芽も伸び出しました。そして、10月、季節は秋本番へと向かいます。やはり寒さが心配でしたので、熱帯魚用ヒーターの利用をお勧めしました。10月中旬には家の中に移動、簡易温室内の水槽(すいそう)に入れ、水温は25℃を維持されたそうです(図2)。こうして暖かく冬を越すことができたニッパヤシは、今も元気に成長しているそうです(図3)。ニッパヤシは、高さ10m ほどになる大きなヤシですが、どのくらい大きくなるか楽しみですね。

図2 冬越し中のニッパヤシ ( 撮影:浦岡由依さん )

図2 冬越し中のニッパヤシ ( 撮影:浦岡由依さん )

図 3 現在の様子 ( 撮影:浦岡由依さん )

図 3 現在の様子 ( 撮影:浦岡由依さん )

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