博物館ニューストップページ博物館ニュース111(2018年6月25日発行)小松島市和田島町漁祭りでのえびす舞(111号歴史散歩)

小松島市和田島町漁祭りでのえびす舞【歴史散歩】

民俗担当 庄武憲子

毎年4月最初の大安(たいあん)の日に行われる小松島(こまつしま)市和田島(わだじま)町の漁祭りは、阿波人形浄瑠璃(あわにんぎょうじょうるり)の人形座(にんぎょうざ)の一つ、勝浦(かつうら)座による「えびす舞(まい)」(えびす舞の表記については様々ありますが、ここではえびす舞で統一します)が奉納(ほうのう)されることで知られています。2018年4月1日(日)にその様子の一部を見学することができましたので、紹介したいと思います。

和田島の漁祭りの起源(きげん)については、よくわかっていませんが、現在のように勝浦座がえびす舞を事代主(ことしろぬし)神社神事、漁業協同組合(以下漁協)や港、浜、加工場などに奉納して廻まわるようになったのは、昭和40年代(1965 ~ 1974)からだと言われています。
今回は午前9時すぎからの神事のあと、神社、漁協、港、浜、加工場など10ケ所ほどにえびす舞の奉納が廻り(図1・2)、午後から漁協建物3階の舞台風に設(しつら)えられた会場で、まず式三番叟(しきさんばそう)の奉納、そしてえびす舞が上演されました。その後シラス漁への大漁祈願から始まり、さまざまな漁への大漁祈願がえびす舞によって行われました(図3)。

図1 港に向かってえびす舞が奉納されるところ。

図1 港に向かってえびす舞が奉納されるところ。
前列奥から、えびす(三人遣い)、詞章と平太鼓(一人)、後列奥からタンゼン2体(一人で遣う)、寄年(二人で遣う)。

図2 タンゼン頭の人形が御幣に神酒を注ぐところ。

図2 タンゼン頭の人形が御幣に神酒を注ぐところ。

図3 えびすから参加者へ振舞われる神酒。

図3 えびすから参加者へ振舞われる神酒。
シラス、ワカメ、ハモなど次々と大漁祈願がえびす舞によって行われる。タンゼン頭の人形はえびすがすすめる盃に神酒を注ぐ役として遣われる。

さて、このえびす舞、演じる人形座や場所によって登場する人形や演技の構成が少しずつ異なります。勝浦座によるこの漁祭りでの場合、えびす人形(三人遣(さんにんづか)い)の他、えびすを迎える代表者の役をする寄年頭(よりとがしら)の人形(ニ人で遣う)、えびすを迎え、御幣(ごへい)を神酒で清めたりする下役(げやく)として、タンゼン頭の人形(一人で遣う)2体が登場します。

最初に寄年が「これこれ若い者、西の宮のおいべっさんを迎えてまいれ」もしくは「おーい浜の衆、三国一のえびすがまいった、浜を清めて神酒を注(つ)げ」の口上(こうじょう)とともに遣われ、タンゼン2体が動き、うち1体が、奉納場所に置かれた御幣に神酒を注ぐ所作をします。その後えびす舞の詞章(ししょう)と平太鼓(ひらたいこ)(舞台では大鼓(おおつづみ))による拍子(ひょうし)とともにえびすの人形が三人で遣われます。えびす舞はもともと淡路の人形座に特徴的なものだったとされますが、淡路の人形座では、タンゼンの人形がえびすの乗る船を漕(こ)ぐ船頭として遣われる場合があるそうです(ただしこれは比較的新しい変化とされています)。

今後、さまざまな人形座のえびす舞も調査したいと思っていますので、何か情報をお持ちの方はぜひお教えください。

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