ウバロバイト【表紙】
地学担当 中尾賢一
ざくろ石(ガーネット)は、複雑な化学組成をもつ鉱物のグループ名です。種類を問わなければ、比較的ありふれた鉱物のひとつです。種類や産地によって色はさまざまで、紅色(べにいろ)または茶褐色(ちゃかっしょく)のほか、緑色やほぼ白色、虹色に見えるものもあります。
ウバロバイトは、灰(かい)クロムざくろ石ともいい、鮮やかで濃い緑色をした、クロムとカルシウムを主成分とするざくろ石です。この鉱物は、黒色のクロム鉱物(クロム鉄鉱またはクロム苦土鉱(くどこう))に、菫泥石(きんでいせき)という赤紫色(あかむらさきいろ)の鉱物とともに産出します。ふつうは皮膜状(ひまくじょう)または微細(びさい)な粒状(りゅうじょう)で、明確な結晶面(けっしょうめん)は肉眼では見えないことが多いのですが、例外的に数mm大の大きさの結晶になっていることがあります。写真のロシア・ウラル地域産の標本はそうしたもののひとつで、クロム鉄鉱の上に菫泥石とウバロバイトの12面体状結晶(菱形(ひしがた)の結晶面)が見られます。ウバロバイトは、愛媛県東赤石山(ひがしあかいしやま)や徳島県勝浦町棚野(たなの)に分布するかんらん岩や蛇紋岩(じゃもんがん)などの中から見つかっています。
企画展「ミネラルズ2019」(2019年4月24日~6月2日)では、このようなきれいな標本や、徳島県や周辺地域から産出した標本などを紹介します。