タンポポ調査・西日本2020にご協力ください【情報BOX】
植物担当 小川誠
2019年と2020年の春に「タンポポ調査・西日本2020」が行われます。
図1 草刈りが行われることによって草地が維持されている山間地の集落。ここにはカンサイタンポポが多く生えている。(徳島県三好市東祖谷)
この調査は市民が参加できるものとして1970年代より継続して行われてきました。初めは大阪で行われましたが、次第に広がりました。「タンポポ調査・西日本」のような広域調査は5年ごとに行われ、徳島県では「タンポポ調査・西日本2010」・「同2015」と合わせて3回目の調査になります。
皆さんのご協力のおかげで、前回の「タンポポ調査・西日本2015」の調査では全体で7万件を超えるデータが集まりました。国内の市民参加型調査では有数のデータ数となります。専門家の協力を得ながら、それら一つ一つを丁寧(ていねい)にデータ化していきますので、学術的にも有用な調査となっています。
調査が進むにつれ、西日本でのタンポポの詳細(しょうさい)な分布を明らかにすることができました。その過程では、在来種(特にカンサイタンポポ)の分布に偏(かたよ)りがあり、徳島県はほとんどがカンサイタンポポ分布圏となっています。また徳島県は、外来種の割合が調査した府県内で一番低く、在来種のタンポポから見ると良い環境を保っているといえます。しかし、外来種の割合は「タンポポ調査・西日本2010」から「同2015」にかけて増えていますので、今回の調査ではどのようになるのか関心がもたれます。
県内では標高の高い山里にもカンサイタンポポが生育していますが、こうした地域は過疎化(かそか)が進んでいます。この植物は明るい草地に集団で生える植物なので、人がいなくなって草刈りが行われないと消えてしまいます。これがたくさん分布していることから、その地域で草地が維持されているといえます。(徳島県立博物館ニュース、97号参照)。
今回の調査期間は2019~2020年の3月から5月で、2021年3月に調査結果が公表される予定です。
調査範囲は福井、三重、滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山、鳥取、島根、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、高知の17府県です。
調査は誰でも参加でき、10分程度で終わります。その方法は、①花の咲さ いたタンポポを見つける、②調査用紙に必要事項を記入する、③タンポポの花を採ってテッシュで包む、④タネがあれば調査用紙にセロテープで貼は り付ける、⑤調査用紙とタンポポの花を事務局に送る、と簡単です。調査用紙は、博物館に取りに来ていただくか、ホームページからダウンロードしてください。
今回の調査で、明らかにしたいのは、タンポポにつく虫こぶ(ゴール)の状況です。昨年11月に徳島市で発見され、四国初記録となったからです。これはタンポポにタマバエの一種が寄生(きせい)しているのですが、わからないことがたくさんあります。そもそも、この正体が何か、現在県内でどの程度広がっているのか、この調査に合わせて解明できれば、今後のタンポポの生育に対する影響も予想することができます。
徳島県で初めての調査から10年後、タンポポから見た自然環境がどのように変化したのか、前回同様いろいろな方々の協力を仰(あお)ぎながら調査を進めていきたいと思います。ぜひともご協力ください。
詳しい調査方法はホームページhttp://gonhana.sakura.ne.jp/tanpopo2020/をご覧ください。ニュースレターやFacebookなどの最新情報もご覧いただけます。