博物館ニューストップページ博物館ニュース123(2021年6月18日発行)新常設展に向けたセトウチサンショウウオの収集(123号特集)

新常設展に向けたセトウチサンショウウオの収集【特集】

動物担当 井藤大樹

新常設展に来館する方々に、徳島の自然や歴史・文化をより深く知ってもらうため、新たな資料を追加する必要があります。今回はセトウチサンショウウオの収集について簡単に紹介します。

セトウチサンショウウオ(図1)は10cmほどの両生類で、里山にある田んぼの用水路のような環境で産卵し、普段はその周辺の森の石や落ち葉の下などで生活しています。しかし、近年では、用水路のコンクリート化や飼育目的の乱獲(らんかく)などの影響で激減しています。徳島でも生息地は年々消滅(しょうめつ)し、生息している場所を探すのは苦労しました。これまでの生息記録を調べたり、サンショウウオ類の調査をしている方に教えてもらったりして、どうにか生息地を見つけることができました。

図1 セトウチサンショウウオ

図1 セトウチサンショウウオ


生息地は、田んぼの横の水路で、セトウチサンショウウオの生息が確認できたのは数十メートルほどのごく限られた範囲のみでした。本種が確認できた水路では、卵や幼生も確認でき、せまい範囲ながらどうにか世代交代ができているようでした。

いざ捕まえるとなると、数が減っている貴重な生きものを捕ってしまってよいものかとの思いが頭をよぎります。しかし、県民の皆さんにセトウチサンショウウオという生きものが県内に生息していることを知ってもらえれば本種の保護につながるかもしれません。また、採集した個体を標本として残していくことで、今回採集した場所でセトウチサンショウウオが確実に生息していたという証拠にもなります。10年後にはこの場所からセトウチサンショウウオが消えているかもしれませんが、標本や記録がなければ生息していたという事実すら知られないままになってしまいます。このような思いから、1個体のみを採集しました。

この個体を基に作製された模型を新常設展で展示する予定です。新常設展で展示される資料の多くは、学芸員の手で、色々な思いを持って集められたものです。大きく目立つ資料はもちろんのこと、セトウチサンショウウオのように小さくあまり目立たない資料もじっくりと見ていただき、何かを感じたり考えたりしてもらえればうれしく思います。

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