新発見のスイギュウ化石が展示されます【特集】
地学担当 中尾賢一
スイギュウという動物をご存じでしょうか?もともとインドやタイ、ネパールなどに分布するウシ科の大型哺乳動物で、大きな三日月形の角を持っています。沼地や河川など湿地やその周辺に生息し、アジア各地で農耕などに使われています。日本ではあまり見かける機会がありませんが、沖縄県ではおもに観光用に飼育されています(図1)。
図1 観光用に飼育されているスイギュウ(沖縄本島)提供:茨木靖学芸員
2013年に鳴門の漁師さんから寄贈された化石のひとつがスイギュウ化石(右上腕骨(みぎじょうわんこつ)の遠位部(右ひじの上))であることが、最近になって明らかになりました(図2)。鳴門海峡ではスイギュウ化石は初めての報告となります。哺乳動物化石の専門家である近藤洋一(こんどうよういち)博士(野尻湖(のじりこ)ナウマンゾウ博物館館長)と私との共同研究で、当館の研究報告に論文が掲載されました。
図2 スイギュウ化石(1点)をいろいろな角度から撮影
発見された場所は、淡路島の阿那賀(あなが)沖で、以前からナウマンゾウやトウキョウホタテなどの化石が数多く見つかっている海域です(図3)。
図3 化石の発見場所
同じ瀬戸内海の備讃瀬戸(びさんせと)では、すでにスイギュウ化石が報告されています。国内では、ウシ科の化石としてはスイギュウのほか、バイソンなどの産出報告がありますが、その数は少なく、あまり研究が進んでいません。その意味でもたいへん貴重な化石といえます。この化石は、新常設展で展示する予定です。
文献:近藤洋一・中尾賢一.2021.鳴門海峡からスイギュウ化石の発見.徳島県立博物館研究報告,(31):1-6.