吉野川上流でのアユ釣り映像撮影―VR体験ルームのコンテンツ制作の裏側―【特集】
民俗担当 磯本宏紀
新常設展では、これまでの展示よりも映像展示が増える予定です。映像展示が増えるということは、その分だけ映像コンテンツの制作が必要です。今回はその映像制作のうちの1つ、吉野川上流でのアユ釣り撮影の「裏側」を少しだけ紹介したいと思います。
新型コロナウイルス感染症(かんせんしょう)の拡大により、思うように計画を進められずにいたのですが、2020年8月以降、吉野川上流漁業協同組合の協力を得て、ようやくアユ釣りの映像制作を進めることになりました。アユ釣りシーズンが終わる直前、初秋からの始動でしたので、撮影とシナリオ作成を急ピッチで進めることになりました。自然相手の撮影ということもあり、天候、川の水量、アユの動きなど様々な条件がクリアされ、なおかつ幸運に恵まれなければなりません。状況を探りつつ計画を進めたのですが、ロケハンを経て、10月上旬にようやく撮影にこぎ着けることができました。
当日は、2つの釣り方を撮影することができました。友掛(が)け(友釣り)(アユのなわばりを持つ習性を利用し、おとりアユを泳がせ、追い出そうと近づいてきたアユを針に掛けて釣る方法)で2名、コロガシ(川底の藻類(そうるい)を食べに集まるアユを針で掛けて釣る方法)で1名、それぞれの釣りで地元の方に出演してもらいました。後日、漁協の組合長など2名にインタビューの収録にも協力してもらいました。
ところで、このアユ釣りの映像コンテンツは、新常設展内のVR体験ルームに設置されるドーム型ディスプレイで公開されるものです。釣り人の視角を疑似(ぎじ)体験してもらうこと、くらしの中にある川を視覚と聴覚で体感してもらうことを目的としています。そのため、360°カメラでの撮影、ウェアラブルカメラ(体に装着(そうちゃく)する小型カメラ)での撮影などにも挑戦(ちょうせん)してみました。また、映像展示をゲーム感覚で楽しめる工夫も進めています。
博物館新常設展にお越こしの際には、実物資料の展示のほか、VR体験ルームにもご期待ください。
図1 撮影準備釣れたアユを釣り人目線で撮影するため、胸に小型カメラをつけさせてもらっています。このときの映像は残念ながら使えませんでした(T_T)
図2 川の中の撮影場所を決める 川の中にカメラスタンドを立て、アユを釣る場所と撮影できそうな位置を調整中。釣り人は、友掛けで釣れそうなポイントを探してくれています。
図3 スタッフが映らないよう撮影 360°撮影なので、映りこまないようスタッフは岩陰に身を潜めて撮影しています。