「みとものつら絵巻」に描かれた江戸供家老(えどともがろう) ― 新常設展の準備の過程から―【情報BOX】
歴史担当 松永友和
江戸供家老(えどともがろう)は、江戸詰(づ)めの家老のことをいい、役職名では江戸留守仕置(るすしおき)とよばれます。江戸において藩(はん)の政治を執(と)り行う立場にあり、留守仕置の下に「近世の外交官」とも称される江戸留守居(るすい)(笠谷和比古『江戸御留守居役』吉川弘文館、2000年)がいました。
新常設展「近世の徳島」「みとものつら絵巻」の展示コーナー
昨年(2020年)、博物館が所蔵する「みとものつら絵巻」に、江戸供家老の行列が描かれていることに気づきました。「みとものつら絵巻」は、13代藩主蜂須賀斉裕(はちすかなりひろ)が初めて阿波に入国する行列を描いたものです。いわば徳島藩の参勤交代を描いた資料ですが、これまで藩主が乗る駕籠(かご)などに注目するあまり、供家老の存在を意識していませんでした。
その存在に気付いたきっかけは、新常設展の準備の過程で、あらためて資料と向き合ったことです。昨秋、新常設展の会議において、「絵巻の人物にセリフをつけましょう」との展示業者側からの発案に対し、当初はあまり乗り気ではありませんでした。しかし、来館者に少しでも資料に親しんでもらえればと思い、美術工芸担当の大橋学芸員と共同でセリフを付ける作業を始めました。いざ行ってみると案外むずかしく、わからない点も多くありましたが、大橋学芸員と相談しながら、また館職員の協力も得ながら作業を行いました。その結果、描かれている人物一人ひとりに目を向けることになりました。さらに、参勤交代や大名行列について調査していくうちに、その内容の面白さをも実感することになりました。
また、ちょうどその頃、徳島藩の江戸供家老の 日記を紹介した論考(三宅正浩「徳島藩江戸供家老の日記」『日本歴史』872号、2021年)にも接し、武家社会において供家老が果たした役割について再認識することができました。
オープンした新常設展では、「みとものつら絵巻」の展示とともに、その手前には映像コーナーが設けられています。江戸供家老を含め、描かれた人物一人ひとりに注目し、資料の魅力を感じていただければと思います。