徳島で“モラエスの花”と呼ばれる花は、何という名前でしょうか?【レファレンスQandA】
植物担当 茨木靖
A.キバナアマ”です(図1)。この植物は、徳島ではポルトガル人の文筆家ヴェンセスラウ・デ・モラエスが好んだ花として、とても有名です。アマ科の低木で観賞用に栽培されます。原産地はインド東部から中国南部で、主として熱帯域の山地に野生し、日本へは明治初期に渡来しています。高さ1mほどになる小さな木で、楕円状倒卵形(だえんじょうとうらんけい)の葉をつけ、冬から春へかけて直径5cmほどの黄色い花を咲かせます。
図1 キバナアマ(田中節子氏撮影)
ある日のこと、植物学の論文雑誌を見ていると、このキバナアマのことが書かれているのに気がつきました。読んでみると、キバナアマによく似た別の植物(亜種(あしゅ))を発見した、という内容のようです。その植物は、有名な植物学者のロックスブルグに因(ちな)んで、ロックスブルギー亜種とされたようです。
ひょっとしたら、徳島のものにもロックスブルギー亜種が混ざっているのかもしれません。そこで、植物に詳しく、博物館の植物観察行事などにボランティアで協力くださっている田中節子(たなかせつこ)さんと板羽由美子(いたはゆみこ)さんに来館してもらい、博物館の標本を一緒に調べ直すことにしました(図2、表1)。
図2 キバナアマの標本を調べる田中さんと板羽さん
調べてみると、葉の特徴や花の付き方などから、キバナアマとは異なるものは無さそうでした。ただし、標本は11点のみであり、花の状態も良くはありません。もっと調べたら、徳島にもロックスブルギー亜種があるのかもしれません。もしも、ちょっと違う感じのするキバナアマを知っていたらお知らせください。
形質 | キバナアマ | ロックスブルギー亜種 |
---|---|---|
葉 | 縁(ふち)に沿って鋸歯(きょし)がある | 縁は多くは全縁。ときに先端付近に鋸歯が出る |
葉柄(ようへい) | はっきりと有る | ほぼ柄が無く、基部は茎を抱く |
花序(かじょ) | 側生または頂生する | 茎頂または葉腋(ようえき)に単生 |
苞(ほう) | 宿存する | 早落性 |
花冠(かかん) | 縁は全縁で、先端は凹頭 | 縁は縮れ、先端は凹頭とならない |
柱頭 | 花冠の筒部を越えて伸び出す。萼(がく)よりも明らかに長い。 | 花冠の筒部程度の長さ。萼と同長。 |
分布 | ヒマラヤの丘陵地 | 帯ベンガル平原 |
花期 | 3~4月 | 11~12月 |