博物館ニューストップページ博物館ニュース125(2021年12月3日発行)ここに遺跡があります―トンネル内に描かれた絵と板野町の弥生遺跡―(歴史散歩)

ここに遺跡があります―トンネル内に描かれた絵と板野町の弥生遺跡―【歴史散歩】

考古・保存科学担当 植地岳彦

板野(いたの)町田園パーク横を南北に走る県道122号線には、高こう架か下したを通過するトンネル部分があります。トンネルの壁や天井には、脱穀(だっこく)をする人、建物、カメ・シカなどの絵が描(えが)かれています(図1)。その一部は銅鐸(どうたく)に描かれた絵を模倣(もほう)しており、弥生(やよい)時代の様子を描いているようです。今回は、トンネル周辺にある二つの弥生遺跡と、トンネル内の絵や、その絵に関連があるオブジェについて紹介します。

図1 弥生時代を彷彿(ほうふつ)とさせる絵が描かれたトンネル内

図1 弥生時代を彷彿(ほうふつ)とさせる絵が描かれたトンネル内

黒谷川宮ノ前遺跡(くろだにがわみやのまえいせき)

黒谷川宮ノ前遺跡はトンネルの北西数百mの場所にあり、発掘調査で弥生時代の水田やアゼ、イネ株の痕跡(こんせき)、鋤跡(すきあと)、人の足跡が発見されました。弥生土器、打製石庖丁(だせいいしぼうちょう)やイネ属の植物珪酸体(けいさんたい)なども出土しており、弥生時代の稲作について具体的な様子を思い浮かべることができる遺跡です。トンネル内には杵(きね)と臼(うす)を使って脱穀作業をする人が描かれ、またトンネルの南側には、巨大な石庖丁のオブジェが置かれています(図2)。絵やオブジェは、弥生時代にこの辺りで稲作をしていたことを表現しているのでしょう。

図2 巨大な石庖丁のオブジェ

図2 巨大な石庖丁のオブジェ

黒谷川郡頭(こうず)遺跡

黒谷川郡頭遺跡は、トンネル東側に展開する弥生時代の集落遺跡です。トンネル北側を東に向かって流れる黒谷川の川底から、発掘調査によっておよそ30棟(とう)の竪穴(たてあな)建物が発見されました。鉄鍛冶遺構(てつかじいこう)や水銀朱の精製に用いた弥生土器や石器が確認されたほか、蛇紋岩製勾玉(じゃもんがんせいまがたま)が出土しました。これにより黒谷川郡頭遺跡は、鉄や朱・勾玉といった重要品の生産や流通に関わる、県内で最も重要な弥生遺跡の一つとして評価されています。遺跡の存在を示すためか、トンネル内には集落を表すように複数の建物の絵が描かれ、黒谷川に架かる黒谷川大橋の欄干(らんかん)には勾玉のオブジェ(図3)が置かれています。
紹介した遺跡は、現在の地面より3m以上深い場所にあり、板野町内を歩いても弥生遺跡の存在を感じることはありません(図4)。トンネルの絵やオブジェは、弥生時代の遺跡が近くにあることを、私たちに教えてくれる目印なのです。

3 橋の欄干(らんかん)に置かれた巨大勾玉(まがたま)のオブジェ

3 橋の欄干(らんかん)に置かれた巨大勾玉(まがたま)のオブジェ

図4 黒谷川郡頭遺跡(くろだにがわこうずいせき)は黒谷川の川底で発見されました

図4 黒谷川郡頭遺跡(くろだにがわこうずいせき)は黒谷川の川底で発見されました

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