博物館ニューストップページ博物館ニュース038(2000年3月25日発行)ブタクサハムシ、徳島県にも侵入!(038号速報)

ブタクサハムシ、徳島県にも侵入!【速報】

昆虫担当 大原賢二

 

ブタクサハムシ(図)をご存じですか?ブタクサハムシ Ophraella communa LaSage, 1986は、甲虫目、ハムシ科の一種です。もともとは北アメリ力にすむ体長4mmほどの小さな昆虫で、日本には生息(せいそく)していない種でした。ところが、数年前に関東と関西でほぼ同時に発見され、ものすごいスピードで日本国中に広がろうとしています。

 

ブタクサハムシ成虫(小川誠氏撮影)

ブタクサハムシ成虫(小川誠氏撮影)


このハムシが日本で初めて記録されたのは1997年で、埼玉県朝霞市(あさかし)でブタクサ、オオブタクサを食害(しょくがい)している本種が発見され、和名を「ブタクサハムシ」として報告されました。しかし、千葉市内をはじめ、東京都や神奈川県下の数力所では1996年にすでに発見されていました。現在では広く関東地方に分布しているようです。

幼虫や成虫は、和名(わめい)の由来(ゆらい)にもなったブタクサやオオブタクサを食べて育ちます。これらの植物は、このハムシと同様に、原産地が北アメリ力で帰化植物として有名ですが、花粉症(かふんしょう)の原因のーつとしても悪名高い植物です。ほかにオナモミやヒマワリなども食べるとされています。

一方、関西地方においても、すでに1997年10月には大阪府枚方(ひらかた)市と高槻(たかつき)市で採集されており、1998年には京都府、滋賀県、大阪府、兵庫県、奈良県などあちこちで報告されていました。現在では富山県にも入り、西ではすでに山口県の下関(しものせき)市や福岡県でも発見されています。

このような侵入昆虫(しんにゅうこんちゅう)が、関西と関東でほぼ同時に発見されていることをどのように考えるかは難(むずか)しい問題です。成田空港と関西空港がある…そう簡単ではないでしょうね。

いずれにしてもこのハムシは、発見されてからその周辺地域へ、鷺くほど阜いスピードで分布を拡大しています。まだ四国に入っていないのであれば、その広がり方などが調べられるのではないかと考えていました。しかし、香川県三豊郡財田町において本種が発見されたことが報告され、すでに四国にも侵入していることがわかりました。

徳島県でも探そうと皆で話していましたが、香川県の記録が発表された直後の1999年9月11日に、植物担当の小川誠主任学芸員が、美馬郡脇町周辺の植物調査を行った際に、ブタクサの葉が食害されているのを発見し、花穂や葉を持ち帰ってくれました。それには、幼虫数頭と蛹(さなぎ)2個がついており、飼育した結果、すべて成虫まで育ちました。成虫は特徴的(とくちょうてき)な条紋(じようもん)をもち、容易にブタクサハムシと同定できました。これが徳島県内での初めての発見となり、その後、鳴門市撫養町、阿波町の土柱付近、美馬郡脇町や美馬町、那賀郡那賀川町などのブタクサで本種が発見されました。しかし、昨年の調査は、すべてブタクサを調査したもので、オナモミのように県下に広く分布している植物の調査を行っていません。小川さんの調べでは、兵庫県加古川市などではオナモミを普通に食べているということで、徳島県でもオナモミなどを含めた調査を行わないと、正確な分布状況は把握(はあく)できないと感じました。

この侵入昆虫のハムシは、今後、徳島県や四国でどのように分布を広げていくのでしょうか。また、なぜこれほどのスピドで広がることができんてきるのか。そして天敵はいないのか・・・など、おもしろい問題をかかえた種であると思われます。皆さんもお近くのブタクサやオナモミなどを探してみて下さい。それらの植物の花や葉を食べている小さなムシがいたら、ぜひご連絡を下さいますようお願いいたします。

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