博物館ニューストップページ博物館ニュース038(2000年3月25日発行)Qこの実のなまえはなんですか?(038号QandA)

Qこの実のなまえはなんですか?【レファレンスQandA】

植物担当 茨木靖

 

A. なんといっても質問(しつもん)の中でもっともおおいのは「この草はなんですか?」といったものです。ここにご紹介(しょうかい)するのもそういった質問のうちの一つ。

ある秋の昼すぎ、いつものようにレファレンスル ームへ行ってみるとなにやら袋(ふくろ)をもった方が来ておられます。早速(さっそく)お話をうかがってみると、何でも外国の知りあいからもらった木の実についてなまえが知りたいとのこと。外国の植物と聞いてちょっとたじろぎながらも期待してお話をうかがっていたところ、袋の中からでてきたのが図1の木の実。なんとも変なかたち!つぼのようで口のあたりが飛び出して昔の釜(かま)のようでもあります。おまけにふた(図2、3)までついていてなんだか民芸品(みんげいひん)みたいじゃありませんか! 何でもこれはブラジルのサンパウロ州のものだそうで庭にうえていたとのこと。さてさて、いったいこれはなんでしょう。そこで、ブラジルの植物(しょくぶつ)について書かれた本を調(しら)べてみるとよくにたのがありました!サガリバナ科のレキティスのなかまのようです。ブラジルではクンブッ力などのなまえでよばれています。

図1そのときの木の実。大きさはソフトボールぐらい

図1そのときの木の実。大きさはソフトボールぐらい

このなかまは中南米(ちゅうなんべい)の熱帯(ねったい)に50種ほどがある木で、レキティスというよび名はギリシャ語で「あぶらつぼ」をいみするレキソスからきているというからなっとくです。

図2実のふたを内側からうつしたもの

図2実のふたを内側からうつしたもの

図3 左がわはふたのついたもの。右がわはふたがとれたところ

図3 左がわはふたのついたもの。右がわはふたがとれたところ

 

図4実の中に入っていた種

図4実の中に入っていた種

図5実の中にタネが入っている様子。

図5実の中にタネが入っている様子。

 

タネには脂肪(しぼう)がおおくて食べられます。人も食べますが、サルがこのタネ(図4、5)をとても好んで食べることから、ブラジルには「年をとったサルはクンブッ力に手を入れない」(Macacovelho nao mete a mao em cumbuca.) ということわざがあるそうです。この意味は、わかいサルはクンブッ力のつぼがたの実(み)の中に手を入れておいしいタネを取ろうとする。しかしタネをにぎると手がでないのであわてる。このことから「経験をつんだ人は失敗しない」といういみのことわざにっかうんだそうです。な-るほど!おもしろいこというなぁ。

さて、質問のほうはこうやってこの実のなまえをお教えしました。実のほうは博物館に寄贈(きぞう)していただけることになり、今では博物館(はくぶつかん)の大切な資料になりました。いつの日にか展示などで皆さんの目にふれることもあるかもしれませんね。

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