秋の七草が減っているのは本当ですか?【レファレンスQandA】
植物担当 小川誠
A. 秋の七草(ななくさ)の種類にはいくつかの説がありますが、一般的なものとして、ススキ、ハギのなかま、クズ、ナデシコ(力ワラナデシコ)、オミナ工シ、フジバ力マ、キキョウがあげられます。もともとは私たちの身の回りに普通に見られた植物を選んだものですが、最近では野生ではなかなか見られないものがあります。
秋の七草3種の生育状況。赤の市町村では過去の記録はあるものの、生育が確認できていない。
環境省が作成した絶滅(ぜつめつ)に瀕(ひん)している植物を集めたレッドデータブックでは、フジバ力マとキキョウはともに絶滅危惧(きぐ)Ⅱ類(絶滅の危険が増大している種)として掲載(けいさい)されています。そして、100年後の絶滅確率(かくりつ)はフジバ力マでは約99%、キキョウでは100%にもなっています。すなわち、キキョウやフジバ力マは100年後には野生ではほとんど見られない可能性が高いということです。
オミナエシ(上)、キキョウ(中)、カワラナデシコ(下)
さらに、徳島県版レッドデータブックでは、オミナ工シも絶滅危惧Ⅰ類(絶滅の危機に瀕している種)とされています。また、レッドデータブックには掲載されていませんが、力ワラナデシコも見かけにくくなってきています。
これらの植物は、いずれも日当たりの良い草地に生えるもので、私たちのまわりから、そうした環境が減ってきていることを示しています。
博物館二ュースのNo.45で紹介した、徳島市上八万町(かみはちまんちょう)のフジバ力マの自生地(じせいち)は、用水路の改良工事によって破壊(はかい)されてしまいました。幸いなことに、工事途中でそのことに気が付いたため、フジバ力マを救い出すことができました。そして、たくさんの方の協力を得て自生地復元に向かった活動が始まっています。
フジバカマの生育地(上、2001年9月撮影)と破壊された後(下、2002年11月撮影)。矢印はフジバカマ。