徳島の「ジンゾク」【情報ボックス】
動物担当 佐藤陽一一
「ジンゾク」、はじめてこの言葉を聞く方にとっては何のことかわからなかったと思いますが、徳島の方は淡水産(たんすいさん)の小型ハゼ類(るい)のことを、親しみを込めてこのように呼びます。高知県や近隣(きんりん)の地域では、「ゴリ」という言い方もします。こちらの呼び方に、なじみがある方もおられるかもしれませんね。
川や湖沼(こしょう)に住む淡水魚には、分類学的には様々なグループが含まれますが、大まかに見るとコイの仲間(コイ目(もく))とスズキの仲間(スズキ目)とその他の仲間とに分けることができます。スズキの仲間の大部分を占(し)めるのが、実はハゼ科(か)の魚なのです。そして川に住むハゼ科の魚のほとんどは、内湾(ないわん)から河口にかけて生息する汽水魚(きすいぎょ)か、一生の間に川と海を行き来する回遊魚(かいゆうぎょ)です。次に、代表的なジンゾクをご紹介しましょう。
徳島県の川に住むハゼ科の魚がみなジンゾクと呼ばれているわけではありませんが、ほとんどの場合、ヨシノボリ属(ぞく)の魚を指しているようです。在来のヨシノボリ属の魚には、ゴクラクハゼ、シマヨシノボリ、クロヨシノボリ、オオヨシノボリ、ルリヨシノボリ、トウヨシノボリ(縞鰭型(しまひれがた))、カワヨシノボリの7 種がいます。その他に、ヨシノボリ属に近縁(きんえん)なチチブ属のヌマチチブの幼魚(ようぎょ)もジンゾクと呼ばれることがあります。これらは種によって微妙(びみょう)に生息環境が異なりますが、上流~下流域の瀬(せ)を中心に住んでいて、比較的目立つので、川遊びのときなどによく出会う、身近な魚と言ってよいでしょう。
オオヨシノボリ
ヨシノボリ属の中でもっとも大型になり、一番上流まで遡上(そじょう)
します。流れの速い早瀬(はやせ)を好みます。
シマヨシノボリ
中流域まで遡上し、早瀬は避け、主に平瀬に生息します
ゴクラクハゼ
下流域までしか遡上しません。平瀬(ひらせ)やトロ(浅い淵)に生息します。
カワヨシノボリ
回遊魚(かいゆうぎょ)ではなく、一生を川ですごす純淡水魚です。上流から中下流の平瀬やトロに生息します。
ヌマチチブ
中流域まで遡上します。成魚は流れのゆるいトロや淵に生息しますが、遡上期に幼魚は平瀬や岸際によく群れています。