妖怪(ようかい)ゾロゾロ【情報ボックス】
歴史担当 長谷川賢二
中世(ちゅうせい)の人々は、道具類や自然など、身の回りのあらゆるところに、多種多様な妖怪や怪異(かいい)現象を見いだしていました。
中世における妖怪のイメージは、『今昔物語集(こんじゃくものがたりしゅう)』をはじめとする仏教説話(ぶっきょうせつわ) や、「百鬼夜行絵巻(ひゃっきやこうえまき)」と総称される絵画などにうかがうことができます。
百鬼夜行絵巻は、いろいろな妖怪たちが現れ、夜明けとともに退散する様子を描(えが)いたものです。カラー図版がたくさん掲載(けいさい)された本が出版されているので、手に取って楽しむことができます。
当館にも、百鬼夜行絵巻の一種である「化(ばけ)もの絵巻」があります。写本ですが、最近の百鬼夜行絵巻の研究を踏(ふ)まえると、原型は中世に制作されたとみてよさそうです。では、いくつかの場面をご覧ください(下の写真)。
① 建物から妖怪が出てくる
② ガマが牽(ひ)く車に巨大な顔の妖怪が乗っている
③ 田楽(でんがく)を見物する妖怪
④ 田楽に興じる妖怪
現代のマンガのように、ユーモラスな妖怪が多数現れています。動植物や道具類などがもとになったものが多く、学校の教科書などで有名な「鳥獣戯画(ちょうじゅうぎが)」のような雰囲気(ふんいき)もあります。
こうした絵巻物を通じて、はるか昔の人々の心の世界を知るのも、歴史の楽しみ方のひとつです。
百鬼夜行絵巻について詳しくて楽しい本
田中貴子・花田清輝・澁澤龍彦・小松和彦『図説 百鬼夜行絵巻をよむ(新装版)』河出書房新社、2007年
小松和彦『百鬼夜行絵巻の謎』集英社、2008年