博物館ニューストップページ博物館ニュース094(2014年3月17日発行)四国のおもしろい在来タンポポ(094号CultureClub)

四国のおもしろい在来タンポポ【CultureClub】

植物担当 小川誠

はじめに

2009年から2010年にかけて、西日本の19府県で「タンポポ調査・西日本2010」が行われました。これほど広範囲でのタンポポ調査は初めてで、数多くの成果がありました。このたび、2014年かS2015年にかけて「タンポポ調査・西日本2015」が行われます。そこで、在来種に注目しながら、四国のタンポポについておもしろいトピックスを紹介してみましょう。

タンポポの花の色は西白東黄

博物館ニュース83号の記事でも紹介しましたが、タンポポの在来種の花の色が東の香川県・徳島県と西の愛媛県・高知県とで大きく違っています。東では黄色のタンポポが多く、西では白色のタンポポが多く生(は)えています。西日本全体でも同様の傾向があり、四国はその縮図ともいえます(図1)。これは黄花の中でも個体数の多い力ンサイタンポポが関西圏および岡山から四国東部に偏(かたよ)って分布しているからです。

図1 各府県ごとの在来タンポポの割合。「タンポポ調査・西日本2010」の成果にもとづく。

図1 各府県ごとの在来タンポポの割合。「タンポポ調査・西日本2010」の成果にもとづく。

タンポポの種類数は西高東低

在来タンポポの種類数に着目してみましょう。東の香川県・徳島県では力ンサイタンポポ、クシパタンポポ、シロパナタンポポの3種しか在来種は生えていません。一方西の高知県・愛媛県はそれらに加えて、オオズタンポポ(トウ力イタンポポ)、ツクシタンポポ、キビシロタンポポ、ヤマザトタンポポなどが生えていて、種類数は西の方が多くなっています。

徳島県のタンポポの課題

先ほど徳島県には在来種が3種しか見つかっていないことを紹介しました。しかし、誤認や見落としの可能性も否定できませんので新しいタンポポが見つかる可能性もあります。徳島県と隣県の県境にはキビシ口タンポポ(図2)やヤマザトタンポポ(図3)が見つかっています。これらが徳島県側にも分布していても不思議ではありません。

図2キビシロタンポポ。高知 ・徳島県境近くの高知県側で見つかっている

図2キビシロタンポポ。高知 ・徳島県境近くの高知県側で見つかっている

図 3ヤマザトタンポポ。愛媛・ 徳島県境近くの愛媛県側で記録されている。

図 3ヤマザトタンポポ。愛媛・ 徳島県境近くの愛媛県側で記録されている。

図4 ツクシタンポポ。古い文献では愛媛県では広い範囲に記録がある。

図4 ツクシタンポポ。古い文献では愛媛県では広い範囲に記録がある。


また、ツクシタンポポは、「タンポポ調査・西日本2010」では高知県で見つかりました。それを受けて愛媛県を調査したところ、愛媛県側にも生(は)えていることがわかりました。このタンポポは他のタンポポと遣っていて、人里よりも山地の茅場(かやば)(ススキなどの採草地)に生えていて、5月中旬くらいと花期が遅く、花の咲いているのが午前中と短いことからことがわかりました。愛媛県では古い文献では広範囲に分布が記録されていますので、前記の特徴を元にもっと見つかる可能性があります。さらに、そうしたところは今まで注目されていませんでしたので、徳島県で見つかってもおかしくはありません。

おわりに

タンポポ調査はもともと外来種と在来種の比率lこ着目し、都市化などの環境を計るために行われてきました。タンポポ調査はなぜ継続的に行われるのでしょうか?-それは人の健康診断に似ています。健康診断で、定期的な値を取っていれば、その値に急激な変化が出たら異常を知ることができます。タンポポ調査は身の回りの環境の健康診断といえます。
さらに、「タンポポ調査・西日本201O」では生物多様性の視点が加わりました。場所によって生えている植物の種類が違うととをよく示しています。このように時代に即した課題を持ちながらタンポポ調査は続いています。興昧のある方はぜひご参加ください。

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