植物を赤く光らせよう【情報BOX】
植物担当 小川誠
本誌No. 110で、ホウレンソウのおひたしがブラックライトで光ることを紹介しました。緑の葉っぱに含まれるクロロフィル(葉緑素(ようりょくそ))がブラックライト(紫外線(しがいせん))により蛍光(けいこう)を発し、赤く光ります。ほかの場合ではどうでしょうか?
アサガオの葉の一部をアルミホイルで光を遮断(しゃだん)した状態で数日おいて、ヨウ素液で染めて、アルミホイルのところはデンプンができていないという光合成の実験をしたことがあると思います(図1A、B)。光が当たらないので光合成ができずにデンプンもできないというものです。図1Aの葉にブラックライトを当てるとアルミホイルのあった部分が赤く光ります(図1C)。
図1 (A)アサガオの葉にアルミホイルをまいて、(B)数日日の光にあてヨウ素液をかけるとアルミホイルの部分だけ青紫色にならずにデンプンができていない。(C)Aの状態でブラックライトを当てるとアルミホイルの部分が赤く光る。
葉には葉緑体というデンプン工場があり、クロロフィルは太陽の光をエネルギーとして取り込む太陽光パネルのような働きをします。光が当たらないと光合成に必要なエネルギーを取り込むことができないのでデンプンもできません。デンプン工場には、クロロフィルのような太陽電池のほか、デンプンを作る機械(酵素など)があります。この機械はいったんとまると動かすのに時間がかかります。光が長時間こないので、機械はとまってしまい、ふたたび光が当たってもすぐにはデンプン工場が動かなくなっています。そんな時に紫外線を当てるとアルミホイルの部分はデンプン工場が動かないので、クロロフィルに取り込まれた光のエネルギーは、光合成に使われず余っています。そこで、クロロフィルはこの使われなかった余分なエネルギーを蛍光として放出し、赤く光ります。光を当て続けるとデンプン工場を動かす準備ができ、光合成ができるようになるので、赤く光らなくなります。
キウイフルーツの果実も緑の部分が赤く光ります。しかし、その品種であるゴールドキウイはクロロフィルがないので赤く光りません(図2)。
図2 (A)通常光のキウイ(B)ブラックライトで照らしたキウイ(C)通常光のゴールドキウイ(D)ブラックライトで照らしたゴールドキウイ
このように植物を赤く光らせたければ、光合成ができないようにしてやればよく、植物を長時間暗い場所においてやるのも一つの手です。さらに、お湯で煮(に)たり、アルコールにつけるなど、光合成に必要なタンパク質を壊してやると赤く光るので、ホウレンソウのおひたしは光ります。みなさんもぜひいろいろなものにブラックライトを当てて、どのような光り方をするか試してみてください。