Q.ホウレンソウのおひたしが光るって本当ですか?【レファレンスQandA】
植物担当 小川誠
ホウレンソウのおひたしはホウレンソウをゆでた料理です。これにブラックライト(紫外線(しがいせん))を当てると、赤く光ります(図1)。
図1 ホウレンソウのおひたし A: 通常光で撮影,B: ブラックライトで撮影(青く光っているのはゴマ)
紫外線でいろいろなものが光ることは、本誌81号(2010年12月発行)の「レファレンスQ&A バナナが光るって本当ですか?」や105号(2016年12月発行)の「レファレンスQ&A ダンゴムシはなぜ光るのですか?」で紹介してきました。
今回のホウレンソウの例では、赤く光っていることから反射ではなく、蛍光を発しています。では、なぜ、このように赤く光るのでしょうか?
ホウレンソウなどの緑の植物は、太陽の光のエネルギーを使って、二酸化炭素と水からデンプンを作るという光合成を行っています。この時、太陽光のエネルギーを取り入れるのがクロロフィル(葉緑素)です。このクロロフィルは面白い特徴があり、真夏のような太陽の光が強い場合は、光合成で使いきれずに余ったエネルギーの一部を蛍光として発しています。これはクロロフィル蛍光と呼ばれ、特殊な機器で測定することができます。光合成がなんらかの原因で行えない場合にも、同様に、使われなかったエネルギーを蛍光として発しているようです。ホウレンソウのおひたしの場合は、ゆでることによって、光合成を制御しているところが壊れてしまい、光合成に使われるはずのエネルギーが余ってしまい、蛍光として放出されたと考えられます。ホウレンソウだけでなく、クロロフィルを持っている植物でこの現象は起こります。
さらに、緑の葉を暗い場所にしばらく置いていたり、アルコールに漬(つ)けたり、強い酸に入れても紫外線で赤く光ります。とろろ昆布(こんぶ)はマコンブなどの昆布のなかまを薄く削ったものですが、削る際に酸で柔らかくして固まりにします。そのせいか、とろろ昆布に紫外線を当てると、とても綺麗(きれい)に光ります(図2)。
図 2 とろろ昆布 A: 通常光で撮影,B: ブラックライトで撮影
図1では、おひたしに振りかけたゴマが青く光っています。まだまだ、私たちの周りには、紫外線で光るものがありそうです。