博物館ニューストップページ博物館ニュース007(1992年7月10日発行)屋根裏の恐竜たち 世界最大の自然史博物館物語(007号本の紹介)

本の紹介

屋根裏の恐竜たち 世界最大の自然史博物館物語

鎌田磨人

ダグラス,J. プレントン著
野中浩一訳
心交社(地球物語双書1)
\2800

屋根裏の恐竜たち 世界最大の自然史博物館物語

この本には、世界でも有数の博物館であるアメリ力自然史博物館がどのように形づくられてきたかがまとめられている。ただ、この博物館に収蔵されている標本の内容やそれらの持つ科学的な意味についての紹介は、「骨の標本にしても、おおざっぱにいって5000万個あり、…鳥が100万羽、アルコールビンに保存された魚が60万匹、…工芸品が800万個、…両生類と爬虫類が26万4000匹、…哺乳類が25万個体、…」と数限りなくあるので、どだい無理な話である。
そこで、というよりもともとの著者の視点は、収集にかける人間の情熱が中心になっている。人類学者のボアズは、消滅しつつある民族文化を記録にとどめなければという思いから、大探検隊をアジアやシべリア、北太平洋へ派遣した。このボアズによる熱意と知的成果により、アメリ力の人類学の進路が決定づけられることになった。この博物館では北極周辺での探検を行ったが、それは、ピアリーが未知の北極点を極めたいと熱望していたからこそ行えたことであった。アメリ力における恐竜化石の発掘は、マーシユとコープの二人の名誉欲がからんだ、憎しみ合いを伴つた発掘競争において飛躍的に進展した、などなど。
探検や調査行の意味合いはそれぞれに異なるものの、様々な危険や困難を克服して行く様子については、私たちの冒険心を満足させてくれる一級の探検記録となっている。それだけでなく、本書は、博物館と科学の発展に関する歴史の叙述としても一級のものである。
「博物館を物体や標本のかたまりとだけ考えて欲しくない、むしろそれが、科学と歴史、人間の情熱、大いなる成果と失敗、未完成のアイデアと卓抜な洞察力とが複雑lこからまりあった網目なのだと理解して欲しい」というのが著者の願いでもある。

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