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「夏休みの自由研究に! 植物から繊維を取ろう」について

 昔の人たちは、周囲にある自然をうまく利用してきました。その一つが布です。化学繊維のない時代で、綿や養蚕が伝わっていないときに、古代の人たちはどうやって布を手に入れたのでしょうか?そもそも、その材料である繊維はどのようにして作っていたのでしょうか?
 このホームページでは、私たちの周囲にたくさんあるカラムシ(苧麻)やクズ(葛)などを利用して、糸になる繊維を取ってみます。昔からの方法ではなく、現代風にアレンジして簡単に繊維を取り出す方法を紹介します。


繊維となる植物①:カラムシについて

カラムシ

 カラムシ(別名、マオ)はどこにでも生えている多年草の草です。苧麻(ちょま)とも呼ばれますが、苧麻には近縁のナンバンカラムシも含まれています。栽培品種がラミーで、カラムシとナンバンカラムシの関係は亜種にしたり、変種にしたり、別種にしたりとややこしいのでここでは、ナンバンカラムシ、カラムシは区別せずに使います。この植物は川の土手や道路に良く生えていて、邪魔者として草刈りされています。


カラムシの繊維を取る方法。

 現在、自然素材の繊維としてよく利用されている「麻」はほとんどがカラムシとアマという植物の繊維です。一方、植物学でいうアサは大麻の原料になる植物で、同様に繊維は取れますが、麻薬の関係で許可無く栽培できないので、このアサ(区別するために大麻草と呼ばれる)を使った繊維はほとんど流通していません。
 国内で「麻」をとるためにカラムシを栽培しているという話はほとんど聞きません。今国内でカラムシを繊維として利用しているのは越後アンギンや宮古上布などの伝統産業としてです。その場合の繊維の取り出し方法は次のようになります。。

①カラムシを採集
②皮をはぐ
③皮の表裏不要な部分をそぎ落とす
④こまかく割く
⑤乾燥させる
⑥使う前に灰汁で煮る
 ネットで「カラムシ 繊維」で検索すると情報が得られます。
 この方法は熟練が必要で、初心者にはちょっと難しいので、たたく、腐らせるの2つの方法を次に紹介します。。


たたいて繊維を取り出す

  基本的にカラムシから繊維を取り出すのは、皮の部分に含まれる丈夫で長い繊維を取り出します。茎や葉の皮以外の部分にも繊維が含まれていますが、簡単には取れませんし、短いので糸にはなりにくいので使いません。
 たたいて繊維を取り出すのは方法としては一番簡単なやり方で、特別な道具も不要なので古代ではこの方法を使ったのかもしれません。 それは次のような工程になります。
用意するもの:木槌かプラスティックハンマー、スクレイパー(表面にくっついたものをそぎ落とすへら)、布(100均の麻でできたランチョンマットなど)

  1. カラムシを採集
  2. 皮をはぐ
  3. 皮の表の不要な部分をスクレイパーでそぎ落とす
  4. 木槌やプラスティックハンマーでたたく
  5. 水洗いし、残っている部分をさらにたたく
 カラムシの皮は茎を取ってきて水につけておくと剥けるようになりますが、固くなっているとなかなか剥けません。Youtubeなどで伝統産業の方々が簡単にやられているのは、あらかじめ茎を切っておいてその後芽がふいて伸びたものです。皮が固ければ、茎を蒸してやると簡単に皮が剥けます。
 皮の表皮(一番表側の薄い皮で茶色をしたもの)は邪魔なのでスクレイパーでこさげ落とします。たたく際には、繊維を切断しないように下に厚い布をしいて木槌なのでたたき、力加減を調整してやります。ただし、力加減を調整してもこの方だと繊維が均一にバラバラにはなりません。

カラムシの皮
はいだカラムシの皮。水につけておく。

カラムシの皮の表皮を取る
スクレイパーでカラムシの皮の表皮を取る。

たたいて繊維をばらばらにする
たたいて繊維をばらばらにする。

ばらばらになったカラムシの繊維皮
ばらばらになった繊維。

途中の状態
途中の状態。繊維が切れないように注意しながらさらにたたく。

できたカラムシの繊維
できた繊維。ちょっとまだ余分なところが残っている。

薄い漂白剤で処理したカラムシの繊維
薄い漂白剤で処理したところ。よって糸状にしてみた。

腐らせて繊維を取り出す

 皮から繊維を取り出すのは、余分な表皮を取り除き、さらに繊維の間にある余分なところを取り除く作業です。繊維は他に比べて固く、水に対しても強いので、皮を腐らせても残っています。それを利用して繊維を取りだしてみましょう。 やり方は次のとおりです。

  1. カラムシを採集
  2. 皮をはぐ
  3. 皮の表の不要な部分をスクレイパーでそぎ落とす
  4. 水につけて暖かい場所に放置
  5. 水洗いをして繊維以外の部分を流す、④~⑤を繰り返す
 最後に薄い漂白剤で処理するとさらにきれいになります。


20日間水につけたカラムシの皮
20日間水につけたカラムシの皮。薄い灰色の部分が繊維。この時には表皮を取り除いていないので、茶色の部分がかなり残っている。

カラムシの繊維
薄い漂白剤で処理した繊維。ほとんどがきれいな繊維である、。

糸にする繊維の取り出し方

 いろいろ試してみているところですが、行事でやっている、糸にすることを目的にした繊維の取り出し方は次のようにしています

  1. カラムシを採集
    枝分かれしていない茎を集める。一番外側の皮が茶色くなる前の、青いものが剥きやすい。
  2. 水に一晩つけておいて皮をはぐ
    皮を剥ぎにくいときは蒸す。
  3. 固い板の上に皮をしいて、皮の表の不要な部分をスクレイパーでそぎ落とす
  4. 裏返して、皮の裏の不要な部分をスクレイパーでそぎ落とす
  5. 透明でむこうが透けて見えるようになったらできあがり。
    だめな場合は、水につけて、暖かい場所に1週間くらい放置して腐らせ余分な部分を取り除く。急ぐ場合は薄い漂白剤を使う。
  6. 繊維がバラバラになりすぎないよう、また、からまらないように慎重に水洗いをして、乾燥し保存
  7. 使う時に水に戻して柔らかくする
  8. 繊維を丁寧に細かく割く
    同じ幅に割くのがポイント
  9. 1本の繊維によりをかける
  10. 繊維をつなげる場合は先端を二又に割いて、からめるようにしてつなげる。
  11. 2本の繊維に上とは逆方向によりをかける
バラバラになるまで腐らせると扱いが難しくなるので、適当なところでやめる。ポイントとしてはできるだけ繊維以外のものは取り除き、糸が折れた時にそこに余分な力が加わって切れないようにする。


繊維となる植物②:クズについて

 クズ(クズ)は私たちの周りに普通に生えている蔓植物です。根からはくず粉が取れます。これからは丈夫で長いとても良い繊維が取れ、掛川葛布として静岡県の工芸品として有名です。
 クズの特徴としてはツル植物なのでとても長い繊維が取れることです。しかも、とても固い繊維なので、茎ごと腐らせても繊維は残り、簡単に採りやすい繊維です。繊維は光沢があり、その美しさが掛川葛布の特徴といわれています。


クズの繊維を取る方法

  1. クズの茎を採集
    枝分かれしていない蔓を集め、葉を取り除き、バケツにはいる大きさに巻いておきます。
  2. バケツに蔓を入れて、水を入れ、暖かいところに2週間くらいおいておく
    しばらくすると腐ってきますが、肝心の繊維をとても丈夫なのでそのままです。
  3. 水をためた大きめのコンテナに入れて、茎を浸けて余分なところを流す。
  4. やや透明なところが繊維なので、それをからまないように取り出していく

水につけたクズ
左から、バケツに浸けたクスの蔓、10日間水につけたもの、強く水洗いして繊維が残っている状態。

繊維となる植物③:コウゾ・ヒメコウゾについて

 コウゾは紙や糸の原料となる植物で、カジノキとヒメコウゾの雑種と言われています。カジノキに似たものから、ヒメコウゾに似たものまで様々な型があると言われています。
 那賀町木頭地区(旧:徳島県那賀郡木頭村)では、これを使って糸をつくり、太布(たふ)という布を織っています(重要無形文化財に指定)。太布はコウゾだけでななく、アサ(大麻)やカラムシから作った布のことですが、木頭地区では古くからの伝統としてコウゾを使っています。


コウゾ・ヒメコウゾの繊維を取る方法

 基本的にはカラムシと同じと考えて良いでしょう。木頭地区では冬に大きな蒸し器でコウゾの枝を蒸して皮を剥ぎます。また、繊維をばらばらにするために、灰汁でゆでたり、氷らせたりします。同じクワ科のマグワやヤマグワなどクワ(桑)の仲間も同じように繊維になります。


繊維となる植物④:アカメガシワについて

 アカメガシワは春先に出る芽がとても赤いのでその名前が付きました。県内ではたいていどこに行っても見かける木です。この木から繊維をとるのはあまり聞いたことがないのですが、試してみると結構良い繊維が取れました。ただ、繊維が太く、ちょっと弱いので、何本かたばねて縄として使うのがよいかんじです。皮は簡単にはげ、繊維のとりかたはカラムシと同じです。



これ以外にも私たちのまわりには、フジやコアカソ、ヤブマオなど繊維の原料となる植物がたくさん生えています。



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