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このページについて。

 このページは、オオキンケイギクの外来種対策の一つとして花を草木染めに活用し、できるだけタネを作らないようにすることを提案しました。ただ、特定外来種についてはその拡大を防ぐために法律でも規制されていますので、慎重に扱う必要があります。そこで、その扱い方を含めて詳しく解説することにしました。
 多くの人が、特定外来種は絶体触ってはいけないものと思っていて、そのままにしておこうとして、駆除が進まないことがあります。見つけたら、抜いて、そのまま現地において枯らしてしまうのも効果的な駆除法で、これも移動していませんので法律違反とはなりません。ここでは、決してむやみやたらな採集を推奨しているものではありません。そのことをご理解の上、お読みください。
 オオキンケイギクの扱いには下の記事をご覧いただき、慎重にすることをお願いいたします。なお、ここで扱うのは2017年6月段階の情報です。法律は改正されますので、常に最新情報をご確認ください。また、誤りなど気が付いたことがあれば教えていただけると助かります。

オオキンケイギクの取り扱いには注意が必要です。

オオキンケイギクは 「特定外来生物」です。
 法律で「特定外来生物」に指定されると、移動や栽培などさまざまな制限がかかります。むやみに扱うと、法律違反となり、罰金などの罰則が科せられます。


 外来種対策の一つとして、オオキンケイギクを草木染めの染料に使う方法を提案しましたが、誤ってタネや根を生きた状態で採集すると、法律違反となります。

「特定外来生物」とは

外来生物(海外起源の外来種)であって、生態系、人の生命・身体、農林水産業へ被害を及ぼすもの、又は及ぼすおそれがあるものの中から指定されます。(環境省のサイトより
 国は外来生物法(特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律)を指定しました。この法律の目的は、特定外来生物による生態系、人の生命・身体、農林水産業への被害を防止し、生物の多様性の確保、人の生命・身体の保護、農林水産業の健全な発展に寄与することを通じて、国民生活の安定向上に資することです。そのために、問題を引き起こす海外起源の外来生物を特定外来生物として指定し、その飼養、栽培、保管、運搬、輸入といった取扱いを規制し、特定外来生物の防除等を行うこととしています。(環境省のサイトより
これによって禁止される事項は

①飼育、栽培、保管及び運搬すること
②輸入すること
③野外へ放つ、植える及びまくこと
④販売や譲渡し、引渡しなどをすること
※これらを実施しようとする場合は環境省の許可を受けなければなりません。

 オオキンケイギクのように「特定外来生物」は蔓延していて、身近に多いものも少なくありません。きれいな花なので花壇に植えられたようになっている光景にもしばしば出くわします。もしろん、これが人為的に植えられたものだったら法律違反です。では、どのようにすれば良いのでしょうか?
 それには法律や制令をもっとよく読む必要があります。

関連法律や政令などはどうなっているのか?

 環境省によって関連法律や制令などはまとめられています。それは、「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」、「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律施行令」、「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律施行規則」になります。
 それらを整理すると、植物の場合、個体、種子(オオキンケイギクの場合は種子のように見えるのは痩果で、果実ですのでここではタネと書きます)、胞子、指定された器官が対象となります。植物の場合は器官が指定されていますが、これは特に根などで、個体をバラバラにしても繁殖できるからだと思われます。その器官はそれぞれの種類ごとに違いますので、「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律施行令」の「別表第三 外来生物の器官 (第三条関係)」で指定されています。また、生きていることが条件となります。
 すなわち、オオキンケイギクの場合には

①生きていること
②タネや指定器官である根を含むこと
が法律の対象となる条件です。逆に言えば、そのいづれにも該当しなければ法律による規制は無いと考えて良いかと思います。
 外来種の啓蒙用ポスターや特定外来生物の扱い方の資料がさまざまなところから出されていますが、オオキンケイギクの場合2つの機関からそれに基づいた情報が出ていました。
外来植物ポケットブック - 四国地方整備局 - 国土交通省 p.3-4
オオキンケイギクの器官は、根なので、除草で刈り取ったものは、種子が付いていない状態であれば、外来生物法の対象外。
長野県特定外来生物パンフレット
 法の適用外となる器官の例
  (いずれも種子の付いていない状態のもの)
  切花状態のオオキンケイギク,オオハンゴンソウ,オオカワヂシャ
  アレチウリの引き抜いた個体

法律に配慮したオオキンケイギクの扱い方

 それでは法律に違反しないよう配慮してオオキンケイギクを扱うのはどうすればよいでしょうか?
 オオキンケイギクを草木染めに使うのであれば、根を採集することはありません。また、草全体を採ってくる必要もありません。花びら(正確には舌状花弁)だけを採るという方法もありますが、タネを作らせないためには、花(正確には頭花、下写真)をまるごと採ってきていただく方が効果的です。萼のように見える緑の部分(正確には総苞)が混じるので色が濁ると思われるかもしれませんが、クエン酸抽出なので、緑色はほとんど抽出できませんので気にする必要はありません。
 花は徳島県内では4月下旬から6月くらいまで咲いていますが、後ろの時期になるとタネができてしまい、これがこぼれて、花を採った時に混ざる可能性が高くなります。これはやっかいで、小さいので花にまじってしまうと見つけにくく、なかなか現地でタネだけを取り除くのが難しくなります。したがって採集する時期はタネがあまりできていない5月下旬くらいまでにした方が良いです。これを越えると良い状態の花の数も少なくなりますので、集めにくくなります。
 花の状態はできるだけ古いものはとらない方が良いです。色も出にくいですし、なにより、タネになりかけている可能性もあります。採集でタネが混ざっている可能性があるなら、花をビニール袋に花を入れたら、アルコール(燃料用などの薄めていないもの、ドラッグストア等で売られている)をふりかけて、生きていない状態にした方が良い場合もあります。あるいは、野外で採ったらすぐにペットボトルなどを利用してクエン酸に漬け込んでしまうのも良いでしょう。

オオキンケイギクの花の咲き方
オオキンケイギクの花の咲き方。A:つぼみ、B:開花、C:終わりかけ、D:開花終了。
草木染めにはBの状態が良い。Dは絶体に使わない。

まとめると、
①タネがあまりできていない、5月下旬くらいまでに
②新しい花で、しぼみかけていないもの
③花だけをまるごと、手で1つずつ確かめながら摘み、ビニール袋に入れる
④タネが入った可能性があるなら、アルコールをビニール袋にふりかけ、タネを殺す。または、採ったらすぐにクエン酸に漬ける。
 これらの配慮ができれば、花が大きく、またたくさん咲いているので、集めやすい草木染めの材料であると言えます。

オオキンケイギクの草木染め

常温クエン酸抽出・染色法でオオキンケイギクの花を使って染めたエコバッグ。
綿100%で、豆乳処理無し。真ん中に白い部分が見えるのが、ビー玉で絞り染めをしたところです。この白色が元々の布の色になります。とても鮮やかな黄色に染まっていることがわかります。
常温クエン酸抽出・染色法でオオキンケイギクの花を使って染めたエコバッグ。
上と違うのは、まず、常温クエン酸抽出・染色法でバッグ全体を染めます。次に、ビー玉で絞り染めを行いました。最後に灰汁の液でアルカリ性にしてやるとオレンジ色になります。ビー玉を外すと灰汁がかからなかった部分が元の黄色になります。綿100%で、豆乳処理無し。アルカリ性にしてやると濃いオレンジ色に染まっていることがわかります。
黄色は常温クエン酸抽出・染色法でオオキンケイギクの花を使って染めた綿100%の糸。
豆乳処理無し。それを灰汁で処理したのがオレンジ色の糸です。その2種類の糸を100円ショップで売らている「手織りツール」で織ったもの。

 これらのように染まりが悪いといわれる綿でも、豆乳処理無しでも染まり強く、鮮やかな色が出るので、オオキンケイギクは工夫次第でいろいろ楽しめます。



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