企画展ミネラルズ

鉱物とは

◆ 岩石と鉱物Rocks and Minerals

鉱物 (こうぶつ) とは、地球の地殻 (ちかく) や惑星をつくる天然の均一な無機質の固体のことで、英語では mineral (ミネラル) といいます。多くの鉱物はほぼ一定の化学組成で、何らかの結晶としての性質をもっています。一般によく知られた鉱物には、たとえば石英 (せきえい) やダイアモンドなどがあります。鉱物の種類は、加藤 (2005) によれば 2005 年 9 月現在で 4246 種です。しかし、日常的に目にする鉱物は、多く見積もっても 100 種類未満でしょう。

鉱物とよく混同されるものに岩石があります。ふつう、日常的に「いし」とよばれているのはほとんどが岩石です。たとえば花崗岩 (かこうがん) (御影石 [みかげいし] ) (図1-1) や砂岩、結晶片岩 (けっしょうへんがん) (“阿波の青石” など)、石灰岩などは岩石で、それらを虫めがねや顕微鏡で拡大して観察すると、1 種類以上の鉱物が組み合わさってできていることがわかります。この意味で、鉱物は岩石の構成要素であり、「地球の細胞」ともよばれることがあります。

鉱物の種類は、化学組成と結晶構造によって定義 (ていぎ) されています。また、同じ種類の鉱物でもでき方や産地により、見え方がまったく異なることがよくあります。したがって、鉱物図鑑で肉眼的に鉱物の種類を決めようとしても、動物や植物の図鑑ほど役に立たないのがふつうです。この点が鉱物のおもしろいところでもあり、とくに初心者にとっては難しい点でもあります。

博物館に展示されている鉱物標本や、鉱物図鑑に掲載されている標本の多くは規則的な形をしていますが、鉱物はかならずしも規則的な形をとるとは限りません。一般的には、鉱物の結晶が成長するときにまわりに充分な空間があれば結晶そのものの形が現れやすくなります。その点で、大型で規則的な形をした鉱物標本はどこか特別な条件 (環境) のもとでつくられたものということもできます。

図1-1 
黒雲母花崗岩
【岡山県万成 左右16cm】
カリ長石(ピンク)、斜長石(白)、石英(灰色)、黒雲母(黒)の鉱物が組み合わさってできている。石英は他の鉱物粒子の間を埋めており、自分自身の結晶の形を示していない。
図1-2 
石英(水晶)
【山梨県乙女鉱山 左右4.7cm】
岩石のすきまに群生した石英の結晶。石英は六角柱状に結晶しやすい。このような石英をとくに水晶とよぶ。
図1-3
ペグマタイト
【岐阜県中津川市 左右20cm】
ペグマタイトとは粒のあらい特殊な火成岩のことで、しばしば空洞(晶洞 [しょうどう] )が発達し、きれいな形をした鉱物が見られることがある。ここでは花崗岩の空洞(晶洞)に成長した長石や煙水晶 (けむりすいしょう) などがみられる。
図1-4
オパール【オーストラリア 左右7.5cm】
鉱物の中では例外的に結晶としての性質をほとんど持たない(非晶質 [ひしょうしつ] )。乾燥剤のシリカゲルとほぼ同等の天然物質。
図1-5
自然水銀
【アメリカ、カリフォルニア州 左右2cm】
銀色で丸いものが自然水銀。赤い部分は別な鉱物(辰砂 [しんしゃ] )。常温常圧で液体である天然物質のうち、自然水銀だけが鉱物として扱われている。