鉱物のものさまざまな性質
◆ 黄鉄鉱Pyrite
図3-5
変質した火成岩の中に入った立方体の黄鉄鉱結晶
【スペイン 横15.5cm】
淡い真鍮色の鉱物です。いろいろな種類の岩石に含まれています。金属光沢をした鉱物のうち、最も普通に見られる鉱物で、徳島県内では、「阿波の青石」(緑色片岩)や四万十帯の黒色泥岩のなかに肉眼的な結晶が入っていることがあります。
黄鉄鉱は結晶の形をとりやすい鉱物です。立方体(図3-5)・5角12面体(図3-6)・正8面体の面が組み合わさって多様な形のものができます。
図3-7はパイライト サン(黄鉄鉱の太陽)とよばれるもので、石炭紀の泥岩の中に、地層の面にそって円盤状に広がったものです。結晶本来の立方体の形は、中央部でわずかに見られます。同じ種類の鉱物でも、でき方が違うとまるで違った見かけのものになる好例です。
なお電子顕微鏡的なサイズの結晶集合体は、海で堆積した泥岩や泥層の中にごく普通に含まれています。このような黄鉄鉱は空気に触れるとすみやかに硫酸と酸化鉄に分解します。その結果、海成粘土特有の「硫黄くささ」の原因となるほか、酸性土壌となって果樹を枯らせたり、地下に埋めた鉄を腐食させたり、人工的に切った斜面を崩壊させるなど、さまざまな困った現象を引き起こします。