身のまわりの鉱物
◆ しのぶ石Dendrite
図4-16
しのぶ石【インド北部 左右 9.3cm】
玉髄に生じたもので、美しく見えるように研磨・成型されている。
図4-17
しのぶ石【ドイツ 左右 7cm】
中生代ジュラ紀の石灰岩に生じたもの。岩石の割れ目に沿っててしのぶ石が生じているのがよくわかる。
岩石の表面に、シダの葉のような形をした黒い模様がみられることがあります。これがしのぶ石(樹形石、模樹石)です。シノブとは、古くから日本で観葉植物として親しまれているシダ植物です。
しのぶ石の正体は、岩石のすきまに生じた二酸化マンガン鉱です。岩石の割れ目(節理)へ雨水や地下水がしみ込み、マンガンが沈着してこのような模様ができます。したがって、しのぶ石がみられるのは節理の面に限られており、新鮮な破断面に見られることは決してありません。また化石は堆積岩に限って産出し、特別な例外を除いて火成岩や変成岩から産出することはありませんが、しのぶ石は安山岩や結晶片岩など、いろいろな種類の岩石にふつうにみられます。
しのぶ石をよく見ると、一部分が全体とほぼ同じような複雑な形をしています。このような形をフラクタル図形といいます。フラクタル図形は、自然物と人工物のいずれにもみられるほか、コンピューターを使って作図することもできます。しのぶ石は、自然界に見られるフラクタル図形の好例です。