身のまわりの鉱物
◆ 蛭石Vermiculite
図4-18
蛭石
【奈良県御所市 左右 4.6cm】
上段は加熱してのびた蛭石。中段と下段は加熱前。
図4-19
市販されている加熱処理した蛭石
【産地不明 左右 6.5cm】
風化した花崗岩からできた山砂(マサ土)の中に、褐色〜金色をした、6 角形の板状〜柱状の結晶が入っていることがあります。層状に薄く剥げる性質があります。金色に光ってきれいなので、筆者は小学生の頃、運動場でこれを集めて遊んでいました。「猫の金」というニックネームがあるそうです。どれくらい一般的なのかはわかりませんが、「ありのお宝」という名前も聞いたことがあります。
これが蛭石で、花崗岩の中に入っている黒雲母(図2-23)が地表で水や酸素にさらされ、カリウムを失うかわりに水分を取りこんで二次的にできた鉱物です。ピンセットでつまんでガスコンロなどで熱すると、にゅーとのびて、10 倍以上の長さになります(図4-18)。層間に入った水分子が熱によって水蒸気となる際に、層間を押し広げて長く伸びるのです。この様子が、ヒル(環形動物:吸血性のチスイビルなど)の動きを思わせることから、蛭石の名がつけられたのでしょう。いったんのびた蛭石は、冷やしても元には戻りません。
伸びた蛭石は、軽くて保温性があり、耐火性、保水性もあることから、バーミキュライト(英語名のよみ)の名前で土壌改良材や建築材、さらには使い捨てカイロの主原料など、多方面に利用されています(図4-19)。