鉱物のものさまざまな性質
◆ 十字石Staurolite
図3-8
直角で交わる十字石
【ロシア 横7.3cm】
十字石は鉄やアルミニウムを含む黒っぽい鉱物で、雲母片岩などの結晶片岩や片麻岩などの変成岩から産出します。世界的にはそれほど稀な鉱物ではありませんが、日本ではあまり産出しません。国内産地として最も有名な富山県宇奈月地方の標本でも、十字形はそれほどわかりやすくありません(図3-9)。
この鉱物は、角柱状の2つの結晶が互いに貫通しあい、十字形になるのが特徴です。2つの結晶が直角に交わるもの(図3-8)と60°の角度で交わるもの(図3-10)があります。このような形は十字架を思わせるため、西洋では珍重され、お守りに使われることもあったといいます。
同じ種類の複数の結晶が、特定の幾何学的な対称性を持って接して成長した集合体を双晶といいます。十字石は、もっともわかりやすい双晶の例でしょう。鉱物の種類や双晶のタイプを問わなければ、ごく普通に見られる現象です。数多い双晶の中でも、水晶の日本式双晶(図2-5)やダイアモンドなどに見られるスピネル式双晶(図3-12)などはわかりやすいため、よく知られています。双晶は単結晶より成長スピードが速く、周囲の単結晶より大型になっていることがよくあります。