企画展ミネラルズ

身のまわりの鉱物

人類は、古代から玉製品の材料や青銅器などの原料として鉱物を利用してきました。現代でも、人間の活動にかかわるあらゆるところで、鉱物を使った製品が用いられています。鉱物そのものの利用は最近では減っていますが、そのぶん純度を高めた人工の鉱物相当物質が多く使われています。ここでは、おもに利用という側面から鉱物を見ていきます。

◆ 辰砂Cinnabar

図4-1
塊状の辰砂
【中国雲南省 左右 7.3cm】
図4-2
辰砂の結晶
【中国湖南省 左右 8.5cm】

辰砂 (しんしゃ) は、硫化水銀 [りゅうかすいぎん] (HgS)を成分とした鮮紅色 (せんこうしょく) の鉱物です。肉眼的な大型結晶(図4-2)にはダイアモンド光沢があります。

水銀の鉱石として、また赤色の顔料として古代から現在まで利用されています。古代中国で不老不死 (ふろうふし) の薬として服用されたり、漢方薬の原料とされたこともあります。

現在では印鑑 (いんかん) 用の朱肉の顔料として、合成した硫化水銀が使われています。また、バーミリオンという鮮やかな朱色の油絵具にも硫化水銀が使われています、しかしこの絵の具は高価で扱いも難しいので、現在ではチント(有機顔料 [ゆうきがんりょう] による同一色)の方が広く使われています。