生物・化石と鉱物
生物は硬い組織を作って体を支えたり外敵から身を守ったりします。生物がつくる「硬いもの」の中には鉱物に相当するものがあり、生体鉱物とよばれています。たとえば、脊椎動物の骨や歯は燐灰石、貝殻は方解石または霰石に相当する物質からできています。鶏卵の殻も、身近な生体鉱物の一例です。生体鉱物の多くは何らかの役に立っていますが、中には腎臓結石など病的に形成される、ありがたくない生体鉱物もあります。
これとは別に、化石の中にも鉱物でできているものがたくさんあります。これには、生体鉱物がそのまま残っている場合と、生物がつくったものとは無関係に、変質したり、まったく別のものに置きかわる場合の2タイプがあります。
◆ 貝殻と真珠Shell and Parl
貝殻は、炭酸カルシウム(方解石または霰石)とそれらをつなぐ有機物からできています。両者の組み合わさり方には何通りかあり、肉眼でも違いがわかります。また、貝の種類によって、方解石で殻を作るもの、霰石で殻を作るもの、両方で殻を作るものがあります。
アコヤガイ(養殖真珠をつくる二枚貝)の内面の中央部(図5-1)には真珠そっくりの色・光沢をした部分があり、縁の方は中央部と比べると光沢がありません。中央部の殻の作りは、真珠層と名づけられており、霰石と有機物でできています。真珠層はアワビ類などの巻貝や絶滅したアンモナイトなどにもみられますが、マガキやシジミ類、ホタテガイのように、真珠層を持っていない貝類も多くいます。
真珠とは、貝の体内に貝殻と同じ成分が沈着してできるものなので、貝殻の内面と真珠の表面は同じ光沢をしています。また、どのような貝にあってもおかしくないものなのです。ふつうの宝石の真珠は、アコヤガイの体内に、異物(核)と貝殻を分泌する組織(外套膜)の切片を入れて作ります。稀にアサリからも真珠が出てくることがあります(図5-2)が、“真珠色”をしておらず、貝殻の内面と同じような色や光沢をしています。
図5-1
アコヤガイの殻の内面
【海陽町 左右 6.3cm】個人蔵
図5-2
アサリから出てきた真珠
【大きい方の長さ 1.85cm】