企画展ミネラルズ

生物・化石と鉱物

◆ 燐灰石Apatite

図5-3
フッ素燐灰石
【カナダ 画面の左右 11cm】
カーボナタイトという特殊な火成岩に入った長柱状の結晶。
図5-4
燐酸塩岩
【中国雲南省澄江県帽天山近く】
古生代カンブリア紀最初期 燐鉱石として採掘されている。小有殻化石群(SSF)を多く含む。カンブリア紀初頭には世界的に燐酸塩岩が多く、硬い殻を持った動物の爆発的増加(カンブリア爆発)と燐酸塩とが関連するのではないかという見解がある。

燐灰石 (りんかいせき) は、ほとんどの火成岩や変成岩に、少しずつですがごくふつうに含まれている鉱物です。

燐灰石とは厳密には鉱物のグループ名で、フッ素を含むもの、塩素、炭酸基、水酸基を含むものなどがあり、鉱物学的にはそれぞれ別種として扱われています。最も普通に産出するフッ素燐灰石(図5-3)の意味で使われることもあります。6角形の柱状のほか、6角形の板状、塊状、土状などのものもあります。透明で大きく美しい結晶はカットされて宝石に、あまり大きくないものはアクセサリー用に加工されます。経済的に重要なのは、燐灰石を主成分とした燐鉱石(図5-4)です。これはアメリカ、中国、モロッコ、チュニジア、ヨルダンなどで大規模に採掘され、化学肥料の原料として使われています。

私たちヒトを含む脊椎動物の歯や骨は、水酸基を多く持った燐灰石(水酸燐灰石)を主成分としています。食べ物の中から燐を集め、体内でカルシウムと結合させて歯や骨を作っているわけです。したがって私たち自身の体の中の歯や骨は、それぞれの体内で合成した水酸燐灰石の相当物質ということができます。