燐灰石とは厳密には鉱物のグループ名で、フッ素を含むもの、塩素、炭酸基、水酸基を含むものなどがあり、鉱物学的にはそれぞれ別種として扱われています。最も普通に産出するフッ素燐灰石(図5-3)の意味で使われることもあります。6角形の柱状のほか、6角形の板状、塊状、土状などのものもあります。透明で大きく美しい結晶はカットされて宝石に、あまり大きくないものはアクセサリー用に加工されます。経済的に重要なのは、燐灰石を主成分とした燐鉱石(図5-4)です。これはアメリカ、中国、モロッコ、チュニジア、ヨルダンなどで大規模に採掘され、化学肥料の原料として使われています。
私たちヒトを含む脊椎動物の歯や骨は、水酸基を多く持った燐灰石(水酸燐灰石)を主成分としています。食べ物の中から燐を集め、体内でカルシウムと結合させて歯や骨を作っているわけです。したがって私たち自身の体の中の歯や骨は、それぞれの体内で合成した水酸燐灰石の相当物質ということができます。